忘年会、帰省、正月のごちそう。年末年始は暴飲暴食に加え、睡眠不足やストレス、不規則な生活が重なりやすい。結果として起きるのが「胃疲れ」である。胃もたれ、膨満感、食欲不振、吐き気といった不快感は、単なる食べすぎではなく、胃の働きが一時的に落ちて“消化の段取り”が崩れた状態と捉えると理解しやすい。

しかも胃の不調は、体調問題にとどまらずビジネス損失にも直結する。2万人調査では「長引く・繰り返す胃の不快感」が15.6%で、推計1213万人に相当するという。さらに、胃の不調で早退・欠勤経験がある人は10.9%(推計847万人)に達し、経済損失は年8000億円超と推計された。胃の不調時の仕事パフォーマンスは平均47.9%まで落ちるという結果も出ている。
医師に聞く「胃疲れ」の正体
川西市立総合医療センター総長で消化器内科医の三輪洋人氏は取材に対し、胃の不快感の背景として、暴飲暴食やストレス、睡眠不足などが重なることで、自律神経が乱れ、胃の動きが悪くなったり、胃酸の分泌が過剰になることが原因だ。
実際、慢性的な胃の不調の原因として「ストレスや精神的な緊張」を挙げた人は46.0%で最多であった。
さらに、三食が不規則な人が過半数、約4人に1人が朝食を抜いているというデータもあり、生活リズムの乱れが“胃疲れ”を増幅させる構図が見える。
まずはセルフチェック
□朝から胃が重い/空腹になりにくい
□胸やけ・げっぷが多い □食後に張る
□すぐ満腹になる □胃がキリキリ痛む □吐き気がある
1つでも当てはまるなら“胃活”を始めたい。
ただし、胃の不調が続く、体重減少、吐血、黒色便(タール便)などがある場合は自己判断を避け、医療機関の受診が前提である。
年末年始に効く「胃活」
1)超手抜き朝ごはん:胃腸のスイッチを入れ、生活リズムを整える。バナナやヨーグルトなど“ひと口”でよい。
2)菌活:胃にも乳酸菌は有効で、胃痛や胃もたれなどの胃の不快感を軽減する効果をもつLG21乳酸菌なども存在する。
3)胃の温活:冷えは胃の動きを鈍らせる。温かい汁物、湯気の立つ料理を選ぶ。
4)威風堂々:猫背は腹部を圧迫し逆流を招きやすい。座るほど意識的に背すじを伸ばす。
胃を休める回復レシピ(考案:管理栄養士・渥美まゆ美氏)
レシピ1:あったか湯豆腐ヨーグルトみそだれ(2人分)

胃に優しいポイント:豆腐で負担の少ないたんぱく質を確保し、ヨーグルト×味噌の発酵食品で回復を後押しする。
レシピ2:とん平焼きヨーグルトソース

胃に優しいポイント:卵とキャベツで回復を助け、マヨネーズをヨーグルトに置き換えて脂の負担を軽くする。
レシピ3:ホットバナナヨーグルトドリンク(シナモン風味)

胃に優しいポイント:消化のよいバナナとはちみつを、ヨーグルトと合わせて温かく取る。シナモンで香りづけし血流促進も狙う。
年末年始の胃は「休ませる」だけでなく「整えながら働かせる」ほうが立て直しやすい。胃もたれを我慢して胃薬だけに頼る前に、 “胃活”を実践することが、胃疲れ予防の近道である。
【取材協力】三輪洋人(消化器内科医/川西市立総合医療センター総長)
【プロフィール】鹿児島大学医学部卒業後、順天堂大学、米国ミシガン大学などを経て、兵庫医科大学消化器内科主任教授等を歴任し、2022年より現職。


