旅行計画における生成AI(人工知能)の活用が、単なる「情報収集」の域を超え、実地での行動を促す強力なドライバーになりつつある。
宿泊施設向けコンサルティングを展開する宿研(横浜市)が19日に発表した調査結果によると、ChatGPTやGeminiなどの生成AIを旅行計画に利用した人のうち、5割以上がAIの提案した目的地を実際に訪れていたことが分かった。AIが既存の検索エンジンや旅行予約サイト(OTA)による「知名度重視」の序列を崩し、地方誘客の新たな回路となる可能性が浮き彫りになった。
「AIがなければ定番を選んでいた」が4割
調査は2026年1月、直近の旅行計画で生成AIを活用した630人を対象に実施された。

AIが提案した場所に「実際に行った」と回答した人は54.6%に達し、「候補に入れた(行かなかった)」とした30.2%を合わせると、全体の8割以上がAIの提案を具体的な検討対象としていた。
特筆すべきは、AIが旅行者の選択行動に与えた変化だ。「もしAIを使っていなかったらどうなっていたか」という設問に対し、38.6%が「定番で有名な目的地や宿泊施設を選んでいたと思う」と回答した。既存の検索アルゴリズムや広告に依存した情報環境下では埋もれがちだった「知られざる観光地」や「地方の施設」が、AIを介することで選択肢に浮上している実態が示された。
宿泊施設に立ちはだかる「情報の壁」
一方で、AIの提案が必ずしも最終的な成約に結びつかない「死角」も明らかになった。

AIから目的地や飲食店、宿泊施設の提案を受けた人のうち、実際の訪問に至った割合をジャンル別で見ると、宿泊施設の採用率は47.0%にとどまった。これは飲食店や観光スポットの採用率を約10ポイント下回る数値だ。
この差を生んでいる要因は、AIの回答精度そのものではない。AIの提案を不採用にした理由の多くは「クチコミが少ない・よくなかった」「公式サイトの情報が少なく不安だった」といった、ユーザーがAIの回答を得た後に「裏付け」として確認する外部メディアの情報不足であった。
「AIの提案に不安を感じた」という回答はわずか2.2%にとどまっており、旅行者の信頼はAI側にある。しかし、最終的な決済(予約)の判断材料となる視覚情報や第三者の評価が整っていないことが、宿泊施設にとっての機会損失を招いている。
■「見つけてもらう」後の情報整備が不可欠
これまでの観光集客は、いかに検索上位に露出させるか、あるいは大手予約サイト内での評価を高めるかという「SEO・広告モデル」が主流であった。しかし、生成AIの普及は、知名度や資本力に劣る地方の施設にも等しく認知のチャンスを与える「民主化」の側面を持つ。
調査を実施した宿研は、今回の結果を受け、課題は「AIに見つけてもらうこと」だけではなく、「見つけた後に安心して選べる情報環境の整備」にあると指摘する。
地方誘客を狙う自治体や宿泊施設にとって、生成AIは強力な「救世主」になり得る。だが、その恩恵を享受するためには、AIの出口の先に待つ公式サイトやSNS、クチコミサイトにおける「情報の質」を再構築することが、2026年以降の集客戦略の成否を分けることになりそうだ。

