NTTとオリンパスは、次世代通信技術「IOWN APN」を活用し、クラウド上で内視鏡の映像処理を実現するシステムを世界で初めて実証した。このシステムは、内視鏡映像を約150km離れたサーバーで処理し、リアルタイムに診断や治療を行うもので、操作者が遅延を感じることなく利用できる。
遅延1000分の1秒での映像処理を達成
従来の内視鏡システムでは、映像処理を端末内で行っていたが、性能限界やアップデートの柔軟性に課題があった。クラウドを活用する新システムでは、内視鏡から送られる高画質の映像を非圧縮のままクラウドに転送し、処理後に返送する。このプロセスの遅延を16ミリ秒以内に抑える必要があったが、実証実験では1.1ミリ秒という目標値の10分の1以下の遅延を達成した。
150km離れたサーバーを使用した遠隔接続と、5m以内でのローカル接続を比較した結果、操作者が遅延の差を認識できない水準であることも確認された。これにより、広域病院ネットワークにおける遠隔映像処理の実現可能性が証明された。
社会実装に向けた今後の展望
両社はクラウド内視鏡システムの本格的な社会実装に向け、データセキュリティの向上や病院間での映像情報共有を含む技術課題の解決に取り組む。また、クラウド基盤によりシステムのアップデートが容易になることで、医療機器の性能向上や高度医療の普及が期待される。
この技術の普及により、遠隔地でも高品質な医療サービスを受けられる未来が現実に近づくだろう。NTTとオリンパスは、持続可能な医療ネットワーク構築を目指し、さらなる研究開発を進めていく予定とのこと。