あおぞらケアグループは、ホリエモンAI学校株式会社と戦略的パートナーシップを締結し、介護業界に特化したフランチャイズ校『ホリエモンAI学校 介護校』を新たに開校した。介護現場における生成AI導入支援や業務の自動化設計、活用人材の育成を通じて、介護業界全体のDX推進を後押しする。

介護職員が初めて減少、2040年には60万人不足
同社の大牟禮康佑代表は、今年介護職員数が介護保険開始以来初めて減少に転じた現状を指摘する。現在212万人の介護職員に対し、2026年には240万人、2040年には272万人が必要とされており、「介護職員の不足数は212万人を維持できたとしても2026年度に約28万人(11.7%)、2040年度には約60万人(22.1%)というもはや個々の事業体の努力だけでは到底埋められない規模に達する」と危機感を示した。
その上で「この危機的な状況を乗り越える唯一の道は、私たち一人ひとりの生産性を劇的に向上させること。つまり、これまでと同じ時間で、より多くの利用者に、より質の高いケアを提供できる体制を築くこと」とし、AIの戦略的活用が不可欠だと強調した。
厚生労働省の調査によると、介護施設における直接支援(排泄介助や食事介助など)と間接業務(事務作業など)の比率は65%と35%だという。大牟禮代表は「仮に、35%をゼロにできれば、介護職員の不足問題は解決するわけです」と述べ、間接業務の効率化が鍵を握ると指摘している。
伴走型支援で現場定着を実現
同校では介護記録の自動作成、報告・連絡業務の効率化、職員間の情報共有など具体的課題にフィットした導入を実施する。業務プロセスの見える化と標準化により、属人化していた業務や紙ベース中心のやり取りをデジタル化し、効率的なフローを設計。介護事業者が自らAIを活用し継続的に改善できるよう人材育成と内製化支援を行い、ツール導入から現場定着までを伴走型で支援する体制だ。
「奪われたやりがい」を取り戻す
AIで効率化して生まれた時間の使い方について、大牟禮代表は「AIで生まれた時間は、人間にしかできないことに使ってほしい」と語る。「介護現場に就職してくる人たちは、ケアをすることに喜びを感じる人たちがほとんどです。ご利用者の表情の変化を感じ取る、穏やかに話を聞く、タスクを消化する時間だけではなくて、そういったことに時間を使う。それがAIの本当の恩恵です」と述べ、「現場では、誰もが『もっと利用者と向き合いたい』と思いながら、書類やシフトに追われています。奪われたやりがいを取り戻す。AIはそのための力です。テクノロジーの導入とは、人間らしい労働のやりがいを取り戻すための挑戦に他なりません」と強調した。

10年後のビジョンについて大牟禮代表は、AIの真価は単なる効率化にとどまらないと指摘する。「AIの導入によって、これまで人間の経験や勘に頼っていた介護を、より科学的に進化させることができる。その核心は、ケアの質そのものを、データに基づいて高めていくことにあります」とし、AIによるケアプラン作成支援を例に挙げた。利用者のアセスメント情報を入力すると、AIが膨大な事例データを解析し、最適なニーズや目標、サービスまでを提案する仕組みだ。「これは、ベテランケアマネジャーの勘と経験をデータで裏づけ、新人でも質の高いプランを作れるようにする、まさに画期的な仕組みです」と説明する。
さらに、AIは日々蓄積される食事量、睡眠、歩行距離、バイタルサイン、会話内容などの介護記録を継続的に学習し、体調変化の予兆や転倒リスク、認知機能の低下傾向といった未来のリスクを予測することも可能になるという。大牟禮代表は「『今、何が起きているか』だけでなく、『これから何が起きうるか』を見える化することで、介護は反応的な対応から予防的・先回りのケアへと進化します。これこそが、AIがもたらす本当の変革です」と未来像を語った。

