AIの急速な進化に伴い、社会全体でデジタルトランスフォーメーション(DX)が推進されている。これにより、既存のシステムや人材の再編が求められる現状も表面化してきている。特に、経済産業省が提唱した「2025年の崖」は、日本企業に深刻な影響を与える可能性がある問題として注目された。AIとDXの進展がもたらす労働市場の変化、レガシーシステムが企業にもたらす課題、そしてこれからの人材の在り方についてどうなっていくのかを考えていきたい。
まず、「2025年の崖」とは、レガシーシステムがDX推進の障害となることで、年間12兆円規模の経済損失が生じる可能性を指摘した問題である。これには老朽化したシステムの維持費の高騰、IT人材不足、新技術への対応遅れなど、複数の要因が絡んでいる。これらの問題を解消しなければ、日本企業はデジタル競争で敗者となりかねない。AI技術の普及に伴い、従来の仕事が自動化される一方で、ITやAIに精通した高度な人材の需要が増加しているが、これに対する備えが十分ではない点も深刻だ。
特にIT人材不足の問題は深刻だ。中小企業がレガシーエンジニアと呼ばれるような募集を減らし、AI人材の確保に注力している現状は、デジタル市場の急速な変化を象徴している。一方で、AIの進化は人々の仕事の性質を変えつつあり、営業やコンサルタントなどの職種は引き続き求められることが多い。AIが情報の分析や提案をアシストすることで、意思決定や交渉能力といった人間固有のスキルがさらに重要になる為だろう。
また、レガシーシステムの問題を克服するためには、技術的負債の解消が不可欠でもある。経済産業省が指摘するように、IT予算の9割を既存システムの維持管理に費やしている現状では、新技術への投資が滞り、企業が競争力を失うリスクが高い。これを解消するには、クラウド技術やアジャイル開発の活用、AIを活用した効率的なシステム移行が求められる。
一方、AIが人々の生活に及ぼす影響も知っておきたい。Anthropic社のダリオ・アモデイ氏が述べるように、AIは病気の治療や精神疾患の研究を促進し、経済発展や貧困削減に貢献する可能性を秘めている。ただし、こうした恩恵を受けるためには、AIの安全性や倫理に関する慎重な議論とガバナンスが必要である。来年、再来年にはアインシュタインを超えるIQを持つAIツールが私たちの手のひらで活躍するのは間違いない。人間が勉強をする意味も再定義されるのではないだろうか。
AI時代の到来は、レガシーシステムの問題や人材不足といった課題を表面化したが、それと同時に新しい可能性にも期待ができる。重要なのは、AI技術を活用する中で、人間固有の価値をどのように再定義し、活用していくかではないだとうか。AIが人々をアシストし、年齢や環境に関係なく能力を発揮できる社会が実現する一方で、倫理やガバナンスを無視すれば、リスクも拡大するだろう。
「2025年の崖」を克服し、AI時代を生き抜くためには、企業はデジタル市場の変化に対応する柔軟性と、AIや新技術に対応できる人材の育成が急務である。これからの人材は、AIを補完する形で高度な判断力や創造性を発揮することが求められるだろう。人々が新しい技術を恐れるのではなく、積極的に受け入れることで、より良い未来を築くことが可能だと言える。
執筆 / 菅原後周