2024年における全国の女性社長数は64万9,262人に達し、前年から6.0%増加したことで、初めて女性社長率が15%を超えた。14年間で3倍に増加したことは、女性の社会進出が着実に進んでいることを裏付けている。しかし、この数値の背景には、依然として根強い男女の役割分担に関する偏見や、業界ごとの差異が存在していることも伺える。
東京商工リサーチが発表した調査記事に対する反応を見ると、女性社長の増加を評価する声がある一方で、「会長の親族や、実質的に雇われ社長が多い」とする指摘や、依然として男性が主要な役職を占める企業が多いとの声が目立つ。特に、伝統的な業界では女性が経営に参画しにくいという現状が指摘されている。これは、調査結果でも現れており、建設業や運輸業など男性が多く従事する業界では女性社長の割合が10%を下回っている。
さらに、女性社長の平均年齢が65.1歳と男性より高く、小規模事業に従事している傾向があることから、女性の経営進出が進んでいるとはいえ、大企業での役割や若年層の経営参入はまだ進んでいないことがわかる。売上規模や従業員規模においても、女性経営者の会社は男性に比べて小規模な傾向が強く、特に売上高1億円未満の企業が約7割を占める。
この状況は、女性が働きやすい環境の整備が進んでいる一方で、依然として根本的な課題は未解決であると感じる。法制度の整備や創業支援は重要であるが、仕事と家庭の両立を実現するためには、男性の家事・育児への積極的な参加や、学校や職場での意識改革が早急に求められている。
今後の課題として、政府や自治体は創業支援だけでなく、少子化対策や育児支援、介護問題などを含む包括的な政策を実施する必要がある。女性の進出を促進するためには、社会全体の意識改革とともに、男女ともに柔軟に働ける環境を整えることが不可欠だ。形式的な数字の改善だけではなく、実質的な女性の活躍が促進されるような環境作りが求められるのではないだろうか。
文・野島カズヒコ