倒産増加が示す経済の現実と日本経済が抱える構造的な課題

帝国データバンクが公開したデータによると、2024年11月の企業倒産件数は834件となり、前年同月を7.9%上回った。これで31カ月連続の増加となり、1990年代初頭以来の最長記録に並ぶ状況だ。1月から11月の累計件数は9053件に達し、12月の結果次第では年間1万件台を突破する可能性が高い。背景には、コロナ支援策終了後の負担増や物価高、人手不足などが原因となり、倒産の増加が続いている。この状況は、日本経済が抱える構造的な課題を明らかにしているのではないだろうか。

倒産増加の背景

倒産件数の増加には複数の要因が絡んでいる。

  • 物価高騰
    物価高倒産の累計は877件と過去最多に達した。特に建設業や製造業では、資材費や人件費の高騰が直接的な要因として挙げられる。価格転嫁が難しく、利益を確保できない企業が破綻している。
  • 人手不足と後継者不足
    人手不足倒産は311件、後継者難倒産は501件と、いずれも記録的な数値を示している。労働人口の減少や経営者の高齢化により、事業継続が難しい状況だ。これらは地方経済に大きな影響を与えており、今後さらに拡大する可能性がある。
  • ゼロゼロ融資後倒産
    コロナ禍での融資支援が終了したことで、返済負担が経営を圧迫している。中小企業における倒産が目立ち、構造的な問題が浮き彫りになっている。

SNS上では「中小企業の経営が厳しすぎる」という声が多く見られる。「円安や原材料費の高騰に対する具体的な対策が見えない」「政治家の経済対策が中途半端だ」という批判が目立つ。また、海外からの労働力不足を懸念する声や、日本の経済構造そのものに疑問を投げかけるコメントも多い。

大手と中小の明暗

一部の大手企業は業態転換を進めているが、中小企業には十分な資金や経営資源がなく、対応策が限られている。例えば居酒屋業界では、大手がハンバーガー店やカフェ、焼肉への転換を図る一方、資金力のない中小店は閉店に追い込まれるケースが多い。このような「優勝劣敗」の加速は、地域経済の衰退にもつながるのではないか。

政府は11月に14兆円規模の補正予算を決定し、物価高対策や地方経済の支援を進めている。しかし、価格転嫁の支援や長期的な構造改革が進まなければ、倒産増加の根本的な解決にはつながらないだろう。また、中小企業が持続可能な経営を行えるよう、人材確保や後継者支援の拡充が急務である。

企業倒産の増加は、日本経済の複雑な問題を反映している。物価高や人手不足など、外部環境の変化に加え、経済政策の効果が限定的であることも要因だ。これから年末に向けて、さらに多くの中小企業が厳しい局面を迎える可能性が高い。この現状を打破するには、短期的な支援策だけでなく、長期的な視点に立った経済構造改革が必要だろう。読者には、自分の地域や職場で直面する課題についても考え、意見を持つきっかけにしてほしい。

文・野島カズヒコ

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