AI検索エンジンのスタートアップとして注目を集める米パープレキシティが、グーグルに対して約345億ドル(約5兆970億円)での買収提案を行い、業界に衝撃が走っている。買収の対象となるのは、世界シェア6割超を誇るブラウザ「クローム」事業だ。
IT業界関係者によると、この大胆な提案の背景には、米司法当局による独占禁止法の執行強化がある。グーグルに対する反トラスト法に基づく規制強化の可能性を見据え、パープレキシティは先手を打って事業獲得を狙う戦略に出たとみられる。
SNS上では「David vs Goliath(ダビデとゴリアテ)の現代版だ」「AI企業の台頭で業界地図が塗り替わるかも」といった期待の声が相次ぐ一方で、「5兆円という金額の妥当性は?」「新興企業に運営能力はあるのか」という懸念の声も目立つ。
テクノロジーアナリストの間では、この提案をめぐって見方が分かれている。ある専門家は「AIによる検索革命の実現に向けた戦略的な一手」と評価する一方、別のアナリストは「グーグルがクローム売却に応じる可能性は極めて低い」と指摘する。
実際、一般ユーザーの反応も賛否が分かれている。あるオンライン調査では、AI企業による事業展開に「良いことだと思う」との回答が合計51.5%を占める一方、「良くないことだと思う」という否定的な意見も45.1%に達した。
業界専門家は「パープレキシティの真の狙いは、単なるクローム獲得だけではない」と分析する。グーグルの基幹事業に対する大胆な買収提案によって、AI企業としての存在感を示し、業界における地位向上を図る狙いがあるとの見方が強まっている。
この提案が実現するかどうかは不透明だが、AI企業が従来のテック巨人に真っ向から挑戦する姿勢を示したことで、業界の勢力図が大きく変わる可能性を示唆する象徴的な出来事となった。
文/進藤昭仁