介護現場に今も残る「大量FAX」、生成AIは事務負担をどこまで減らせるか

介護・福祉事業を手がけるあおぞらケアグループと、介護業界向けのシステム開発を行うケアchatは、介護事業所の事務作業を効率化するサービス「AI介護事務」の提供を始めた。FAXで届く書類の確認や整理、情報共有などを生成AIで補助し、職員の負担軽減につなげるという。

介護業界では、人手不足への対応と同時に、限られた人員をどの業務に振り向けるかが経営上の課題になっている。利用者へのケアに加え、記録作成や関係機関との連絡、請求関連業務などが発生し、現在もFAXを含む紙ベースの情報共有が残る事業所は少なくない。

今回のサービスでは、導入先ごとに削減したい業務や現在の仕事の流れをヒアリングし、AIが処理する範囲を個別に設計する。既存の業務フローを大きく変更するのではなく、現場の運用に合わせて導入する考えだ。

※「AI介護事務」 

では、実際に介護事業を運営する側は、生成AIの導入を経営課題の中でどう位置づけているのか。あおぞらケアグループを運営するACGの大牟禮康佑代表に聞くと、「深刻な人手不足が続くなか、膨大な書類やFAX作業などの事務負担軽減は急務」と話す。

同グループでは実際の施設業務をもとにサービス開発にも関わった。大牟禮氏は「業務フローを大きく変えずに導入できることを重視した」とし、AIに定型的な事務作業を担わせることで、職員が利用者と向き合う時間を確保したいと説明する。単なる省力化ではなく、人材配置や業務設計を見直す手段としてAIを捉えている点が特徴だ。

一方、技術を導入するだけで現場の生産性が上がるとは限らない。開発を担当するケアchatの城戸勇人代表は、「単にAIを導入するのではなく、介護現場の実情に寄り添った形で活用を支援することが重要」と話す。今後さらに人材不足が進むことを見据え、事務作業をAIで補完し、職員が本来の介護業務に割ける時間を増やす考えだ。

料金は初期費用19万8000円から、月額3万9600円から。法人単位で契約し、複数事業所で利用できる。ケアchatは初年度25社、3年後150社への導入を計画している。

もっとも、介護現場では利用者の病歴や生活状況など、要配慮個人情報を扱う。AIによる処理精度を誰が確認するのか、情報管理をどう設計するのかといった課題も残る。人手不足を背景に介護DXへの期待は高まるが、実際にどれだけ業務時間を削減し、経営効率やサービス品質の改善につながるのか。今後は導入現場での具体的な成果が問われそうだ。

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