『風さわぐ北のまちから 少女と家族の引き揚げ回想記』が第72回小学館児童出版文化賞を受賞したと、株式会社佼成出版社が発表しました。この作品は、2022年6月30日に同社から刊行され、遠藤みえ子氏が著したものです。小学館児童出版文化賞は、毎年度、児童出版文化の向上に寄与する作品や作家を選出し、表彰しています。
受賞作品『風さわぐ北のまちから 少女と家族の引き揚げ回想記』は、1945年8月の日本の敗戦時、かつて日本の植民地であった朝鮮に住んでいた日本人が「外地」に取り残された状況を描いています。その中でも11歳のれい子とその家族の生活が描かれており、朝鮮半島を二分した〈三十八度線〉の北側の港町・鎮南浦での厳しい冬や、寒さと食料不足、ソ連兵による略奪、北朝鮮建国の混乱など、当時の生活の厳しさがリアルに描き出されています。
それでも彼女たちが生き抜いたのは、朝鮮の人々や隣に住んでいたソ連軍大尉との交流など、人間のつながりの力によるものでした。少女の目を通して描かれるその生活は、母と6人の子どもたちが日本へ帰り着くまでの奇跡の実話になります。
この作品は、当時の生活を生き生きと描いたことで読者の共感を呼び、児童出版文化の向上に寄与したと評価されています。この作品が受賞したことで、日本による朝鮮半島統治や第二次世界大戦の歴史を振り返るきっかけとなり、新たな歴史認識を深める機会となることが期待されています。
【本書の特徴】
・著者の実体験をもとにした作品である
・類書が少ない「朝鮮北部からの引き揚げ」をテーマにした作品である
・地図あり/脚注あり/章扉に挿し絵あり/中学生以上の漢字にルビあり
【本書の概要】
書名:風さわぐ北のまちから 少女と家族の引き揚げ回想記
著者:遠藤みえ子・著/石井勉・絵
発売日:2022年6月30日
販売場所:全国の書店・インターネット書店
定価:1,760円(税込)
体裁:四六判/224ページ
ISBNコード:978-4-333-02873-3
URL:https://books.kosei-shuppan.co.jp/book/b606915.html
【著者紹介】
遠藤みえ子(エンドウ・ミエコ)/釜山生まれ。6歳で倉敷へ引き揚げる。東京女子大学英米文学科卒。吉祥女子高校、都立高校で計31年間、恵泉女学園短大、東京女子大学で計17年間、非常勤講師として勤務。『スージーさんとテケテンテン』で、小川未明文学賞優秀賞を受賞。主な著書に『あじさい寮物語』(講談社)、『やなぎ通りのスージーさん』(PHP研究所)、訳書に『ハリスおばさんモスクワへ行く』(講談社)などがある。日本児童文学者協会会員。日本こどもの本研究会会員。バオバブ同人。
石井勉(イシイ・ツトム)/千葉県生まれ。作絵の作品に『オタマジャクシつかまえた!』『ふねのとしょかん』(共に文研出版)、絵本や児童書の挿し絵に「絵本 子どもたちの日本史」(全5巻、大月書店)、『きつねの童子 安倍晴明伝』(子どもの未来社)、『命のうた ぼくは路上で生きた十一歳の戦争孤児』(童心社)などがある。
【会社概要】
社名:株式会社佼成出版社
代表者:代表取締役 中沢 純一
所在地:〒166-8535 東京都杉並区和田2-7-1
URL:https://books.kosei-shuppan.co.jp/