近年、企業の不正や不祥事が注目を集めている。デロイト トーマツ グループが2024年10月9日に発表した「企業の不正リスク調査白書」によると、企業の不正リスクが増加傾向にあることが明らかになった。この調査は714社を対象に実施された。
コロナ禍後のオフィス回帰で不正発覚増加
調査結果によると、過去3年間に不正や不祥事が発生した上場企業の割合は50%で前回調査と同じだった。しかし、6件以上の不正が発生した企業の割合は14%と、前回より5ポイント増加した。
この背景には、コロナ禍でのリモートワークが解除され、従業員がオフィスに戻ったことがある。オフィスでの業務再開により、これまで見えにくかった不正が発覚しやすくなったと考えられる。
不正の内容は、国内と海外で傾向が異なる。国内では会計不正やデータ偽装などの組織的な不正が多く、海外ではサイバー攻撃が目立つ結果となった。
コンプライアンス意識向上も、実践に課題
企業のコンプライアンス意識は高まっているものの、実践面では課題が残る。93%の企業が、コンプライアンス違反の範囲が広がっていると認識。88%は法令違反だけでなく、社会的・倫理的なルール違反も含まれると考えている。
一方で、遵守すべき法令を海外も含めて網羅的に確認できている企業は10%にとどまった。リスク評価やモニタリング、取引先への対応が十分でないと回答した企業も70〜90%に上る。
ガバナンスの面では、経営者への監督や監視に対する意識が低いことも明らかになった。ガバナンスで重視する項目として、コンプライアンスや不正防止を挙げる企業が50%以上だったのに対し、経営者の監督・監視を挙げた企業は18%にとどまったのだ。
一方で、内部通報制度には改善の兆しも。不正関連の内部通報があった企業の割合は41%と、前回調査から6ポイント増加した。匿名性の確保や専門部署の設置など、運用面での改善が進んでいるようだ。
「企業の不正リスク調査白書 Japan Fraud Survey 2024-2026」 デロイト トーマツ グループ
https://www2.deloitte.com/jp/ja/pages/risk/articles/frs/jp-fraud-survey.html