フリマアプリの大手「メルカリ」が、新たにモバイル通信サービス「メルカリモバイル」(https://mobile.mercari.com)を発表した。これは、ドコモ回線を利用したMVNO(仮想移動体通信事業者)であり、メルカリアプリを通じて申し込める。特徴としては、2GBで月額990円、20GBで月額2390円のシンプルなプランのほか、ユーザー同士でデータ容量(ギガ)を売買できる点がある。

メルカリがモバイル通信事業に参入した背景には、同社の調査によると、多くの人がデータ容量を余らせているか、逆に不足して追加購入しているという現状がある。この課題を解決するために、柔軟なギガの売買機能を持つ「メルカリモバイル」が生まれた。しかし、この新サービスにはどのようなメリットや課題があるのだろうか?
SNSの意見とメルカリモバイルの課題
価格設定の問題
SNSでは、「他社の方が安いのに、ここを使うメリットはない」「格安SIMの相場が下がっており、2GB990円はかなり割高」といった意見が見られる。実際、現在の格安SIM市場では、2GBで500円前後のプランも存在するため、990円は競争力があるとは言いにくい。20GBの2390円は妥当な水準ではあるが、特別に安いわけでもない。
そのため、メルカリモバイルが「安さ」を売りにするのは難しいだろう。しかし、メルカリの強みは、既存のユーザー基盤とアプリの利便性にある。例えば、メルカリのヘビーユーザーが「メルカリの売上金でそのまま通信費を払える」といった点を魅力に感じれば、一定の需要は見込めるのではないか。
ギガの売買システムは本当に使われるのか?
メルカリモバイルの最大の特徴は、ユーザー同士でデータ容量を売買できる点だ。しかし、SNSでは「1GB200円で購入する人がいるのか?」「手数や段取りの煩わしさがありそう」といった疑問が出ている。
たしかに、現在の通信業界では、楽天モバイルの「無制限プラン」やpovoの「ギガ購入オプション」など、柔軟なプランが増えている。これらと比べると、わざわざ個人間でギガを売買するメリットは少ないように思える。特に、手続きが面倒だったり、取引がスムーズでなかったりすると、利用者は増えにくいだろう。
しかし、一方で「メルカリのような売買文化に慣れているユーザーにとっては、新しい形の節約手段として定着する可能性もある」という見方もできる。例えば、データをよく使う月とそうでない月の差が大きい人にとっては、使わない分を売れるのは合理的かもしれない。
競争の激しい市場で生き残れるのか?
MVNO市場はすでに競争が激しく、大手キャリアのサブブランド(ahamo、povo、LINEMOなど)も存在感を強めている。そのため、「povoには勝てない」といった声も多く聞かれる。特にpovoは、必要なときにギガを追加できる仕組みが整っており、メルカリモバイルのギガ売買機能の優位性が薄れてしまう可能性がある。
しかし、メルカリモバイルはまだ始まったばかりであり、今後の改善次第では独自のポジションを確立できるかもしれない。例えば、メルカリの売上金と連動する割引制度を強化したり、もっと手軽にギガを売買できる仕組みを導入したりすれば、他の格安SIMとは違った価値を生み出せる可能性がある。
メルカリモバイルは成功するのか?
現時点では、メルカリモバイルの魅力はやや弱く、特に価格面では競争力に欠けるという意見が多い。ギガの売買システムも、実際に利用されるかどうかは未知数であり、povoなどの競合サービスと比較すると利便性で劣る部分もある。しかし、メルカリはすでに多くのユーザーを抱えており、そこに独自のメリットを提供できれば成功の道も開けるだろう。
今後、メルカリモバイルがどのように進化するのかが鍵となる。料金体系の見直しや、より便利なギガ売買の仕組み、メルカリ経済圏との連携強化など、工夫次第では他社と差別化できるはずだ。果たしてメルカリの新たな挑戦はどこまで通用するのか、今後の動向に注目したい。
執筆 / 菅原後周