米ホワイトハウスは19日、これまで安全保障上の懸念から利用制限を検討してきた中国系動画投稿アプリ「TikTok」に公式アカウントを開設した。米国内のユーザー数が1億7000万人を超える同プラットフォームを活用し、若年層への政策発信を強化する狙いがある。
政権関係者によると、この決定は長期にわたる内部での議論を経て下されたという。TikTokに対する規制強化を主張してきたバイデン政権にとって、この転換は大きな方針転換となる。
SNSに詳しいメディアアナリストの間では、「2024年の大統領選を見据えた戦略的な判断」との見方が広がっている。18-29歳の若年層の約67%がTikTokを利用しているとされ、この層への効果的なリーチが期待できる。
ソーシャルメディア上では、この決定に対して賛否両論が巻き起こっている。「若者の声に耳を傾ける姿勢を評価する」という肯定的な意見がある一方で、「中国企業が運営するプラットフォームの利用は依然としてリスクが高い」との批判的な声も目立つ。
IT業界関係者からは、「9月に迫るTikTokの米国内での事業継続に関する猶予措置の期限後も、何らかの形でサービス提供を認める意向を示唆している可能性がある」との指摘も出ている。
ホワイトハウスの広報担当者は「政策の透明性を高め、より多くの米国民、特に若い世代との対話を促進することが目的」と説明。今後は大統領の日常や政策説明などのコンテンツを定期的に投稿する予定としている。なお、トランプ前政権時代には「TikTokは国家安全保障上の脅威」として米国での利用禁止を検討していたが、バイデン政権はより柔軟なアプローチを模索している様子が窺える。
文/進藤昭仁