生成AIを仕事で使うことが、特別なものではなくなりつつある。一方で、その利用状況を企業側がどこまで把握し、リスクを管理できているのか。生成AIの普及が進むにつれて、新たな課題も見えてきた。
アビタス教育総合研究所が全国の30~65歳の管理職以上の会社員350人を対象に実施した調査によると、会社が契約・承認し、アカウントや利用条件を管理している生成AIを、何らかの形で業務利用している企業は54.6%だった。
内訳を見ると、「全社的に利用している」が26.0%、「一部の部署で利用している」が19.7%、「試験的に利用している」が8.9%となっている。

ところが、生成AIの業務利用に関するルールやガイドラインについて、「整備され、従業員にも十分に浸透している」とした回答は15.1%にとどまった。
「整備されているが、十分には浸透していない」が19.7%、「現在整備を進めている」が14.6%。さらに「必要性は認識しているが、整備できていない」と「必要性を含め、まだ十分に検討されていない」を合わせると34.9%となった。
生成AIは比較的短期間で導入できる。その一方で、社内ルールの策定や周知、研修、利用状況の確認といった運用体制の構築には時間がかかる。今回の調査からは、「まず使い始める」という段階から、「どう管理するか」を考える段階へと企業の課題が移りつつあることが読み取れる。
「会社が知らないAI利用」も3割
もう一つ課題となっているのが、会社が契約・承認していない生成AIの利用だ。個人アカウントや無料版など、会社の管理外にある生成AIを業務で「利用している従業員がいる」と回答した管理職は31.7%だった。

さらに、「利用している可能性はあるが、実態を把握できていない」が18.3%、「状況を把握しておらず、分からない」が26.3%。両者を合わせると44.6%となり、そもそも管理外AIが使われているかどうかを把握できていない企業も少なくない。
こうした、企業が把握しないところで生成AIを業務利用する、いわゆる「シャドーAI」は、情報管理の面でも無視しにくい問題だ。
ただし、単純に利用を禁止すれば解決するとも限らない。業務の効率化を目的に従業員自身がAIを使い始めるケースも考えられるため、企業側には、安全に利用できる環境を用意したうえで、「どのAIを使ってよいのか」「何を入力してはいけないのか」を具体的に示すことが求められる。
最大の不安は「情報漏洩」ではなく「誤情報」
生成AIの利用をめぐるリスクについても、興味深い結果が出ている。
最も多かったのは「AIが生成した誤情報の利用」の43.1%。一般的に懸念されやすい「機密情報や個人情報の漏洩」は33.7%で、「著作権や知的財産権の侵害」が28.0%、「会社が承認・管理していない生成AIの利用」が23.1%だった。

実際に発生したトラブルやヒヤリハットでも、「生成AIが出力した誤った情報をそのまま業務に使用した」が17.1%で最多。「著作権侵害の可能性があるコンテンツを生成・使用した」が15.7%、「生成AIの出力を顧客等に提供し問題が生じた」が13.1%と続いた。

一方で、31.1%は、こうしたトラブルやヒヤリハットの発生状況そのものを把握していないと回答している。
AIが出した回答を人が確認せず、そのまま資料や顧客向けの情報として利用してしまえば、誤情報が業務の中に入り込む可能性がある。生成AIのリスク管理は、情報漏洩を防ぐだけではなく、「出力された内容を誰が確認するのか」という業務プロセスにも関わってくる。
AIを「使える人」だけでは足りない
企業の体制面でも課題がある。
生成AIの利用状況やリスクを確認・評価する仕組みについて、「あまり整備されていない」「まったく整備されていない」とした回答は合計51.1%。「十分に整備されている」は8.9%にとどまった。
さらに、生成AIのリスクを確認・評価するための知識や経験を持つ人材について、「あまりいない」が29.1%、「まったくいない」が19.1%で、合わせて48.2%となった。

今後必要になる取り組みを尋ねると、「従業員への生成AI・リスク教育」が36.6%で最も高く、「利用ルールやガイドラインの整備」が32.0%で続いた。
その一方、「AIのリスクや管理体制を独立した立場から評価・監査できる人材」は7.7%、「外部専門家による第三者評価や助言」は3.1%にとどまっている。
生成AIの活用を広げるだけなら、操作方法やプロンプトの書き方を学ぶことでも一定の効果は期待できる。
しかし、AIが日常業務に組み込まれるほど、「誰が使っているのか」「どの情報を入力しているのか」「出力内容は正しいのか」「問題が起きたとき誰が対応するのか」といった管理の重要性は増していく。
今回の調査は2026年8月、IT・情報サービス業を除く一般企業に勤務する課長職以上の管理職350人を対象に実施された。そのため、日本企業全体の状況をそのまま示すものではない点には留意が必要だ。
それでも、生成AIを「導入するかどうか」という議論から、すでに導入されたAIを「どう運用するか」という議論へ。企業の生成AI活用が次の段階に入りつつあることを示すデータといえそうだ。

