朝日新聞社は6月13日、インターネット上に拡散する偽情報や誤情報の対策強化に乗り出した。新設した「ファクトチェック編集部」が司令塔となり、編集局全体が一体で事実検証に取り組む。6月の東京都議選、7月の参院選を前に、健全な言論空間の維持を目指す方針。

ファクトチェックはこれまで主に政治部が担当し、公人の発言などの真偽を確かめてきた。しかし今後は、ネット上で急増する偽情報や誤情報まで幅を広げる。朝日新聞のデジタル版では、関連する記事を全文無料で公開する方針を打ち出した。判定の基準は「国際ファクトチェックネットワーク(IFCN)」の五つの原則をもとに独自設定。客観的な証拠を重視し、透明性の高い手順で検証を進める。

編集部のトップには、仲村和代が編集長として就任。過去に社会部デスクなどを歴任し、現場経験が豊富な人物。仲村編集長は「事実に基づく情報を、取材の過程や根拠とともに示すことで、ネット上にあふれる偽情報に歯止めをかけたい」と語る。編集局の合言葉は「全員がファクトチェッカー」。これまで約60件の事実検証を積み上げてきた実績も後押しになる。

春日芳晃編集局長は「SNSなど誰もが情報発信できる時代。だからこそ報道機関としての信頼や経験を最大限に活かす」とコメント。大手メディアとしてファクトチェック活動を国内で初めて本格展開したのは朝日新聞。2016年から積極的に実施し、今後は8段階の独自基準で画像や音声、動画の真偽にも踏み込む。
同社はファクトチェック情報を他メディアと共有し、協力する姿勢も強調。最新技術を活用しながら、「民主主義を守る砦」としての責任を果たしていく考え。