全日本空輸(ANA)と日立製作所は、悪天候などで乱れた運航ダイヤの修正案を高速・最適に自動立案するシステムを共同開発し、2025年7月より稼働を開始した。同様のシステムは本邦航空会社として初めてとなる。

本システムは、ANAが培ってきた運航のノウハウと日立の技術を掛け合わせて開発された。悪天候などによる運航ダイヤの乱れが予測される、または発生した場合、航空機の運航スケジュール、整備計画、乗務員計画、空港における各種条件などの膨大なデータを収集・解析し、運航ダイヤの修正案を自動で複数立案する。これらの変更に伴う機材の整備計画の修正も自動で行われる。
従来、これらの対応は熟練社員の経験とノウハウに頼る部分も多く、限られた時間内で複雑な条件を考慮した最適なダイヤに修正することにおいて、人材育成や修正案策定までの所要時間に課題があった。ANAと日立、日立コンサルティングは課題解決に向けたシステム構築のために、2019年より取り組みを開始し、実証実験を重ねた結果、自動立案されたダイヤの修正案が、これまで人が実施してきた品質と同等の水準となった。

導入されたシステムにより、修正案検討の所要時間を最大で70%短縮し、台風の進路や速度などの天気予報の変化に何度でも柔軟な対応が可能となる。また、短時間でダイヤの修正案の立案と判断に迫られるオペレーション担当者の心理的負担を軽減し、複数の修正案を迅速に比較することによる運航の安定性向上を実現する。
ANAは今後もデジタルの活用による人的リソースの最大化を推進し、航空業界における世界最高品質のオペレーションの実現をめざしていく。日立は、共同開発した本システムをLumadaソリューションとしてANAの国際線オペレーションや世界の航空会社にスケールさせることで、人々の生活を支える社会インフラの強靭化を通じ、フロントラインワーカーの生産性や人々のウェルビーイングの向上をめざしている。