こどもの予期せぬ死を防ぐCDRの取組「他人事から自分事」への意識改革

厚生労働省では令和2年より、複数の都道府県が実施主体となり、「予防のためのこどもの死亡検証・CDR(Child Death Review)」をモデル事業として実施している。このCDRの取組に参加し、提言を続ける名古屋大学医学部附属病院救急内科系集中治療部部長・沼口敦氏に話を伺った。

CDRは、医療や行政をはじめとする複数の機関や専門家と連携。
こどもの死亡事例について「情報収集・検証・予防策の提言」の3つのプロセスを踏んで、未来のこどもの死亡を防ぐための効果的な対策を講じる取組のこと。「何が起こった」のかを明らかにするのが死因究明で、その結果を基に「これから何をするのか決める」のがCDRと位置づける。

沼口氏は、こどもの病死に関する検証情報は今までにあるものの、病気以外で亡くなったこどもの統計資料が極端に少ないことから、顕在化されていないこどもの死因がまだまだあるはずと、情報収集の必要性があるとのこと。ただ、現時点では死因究明の地域差もあるため、情報収集の進み具合は、地ならし段階であるという。

沼口氏曰く「環境整備以外にも、社会が見て見ぬ振りをしないことが大事」とのことで、社会が無関心を決め込んでしまいこどもの死のリスクが増える現状に、警鐘を鳴らしている。

また、交通事故や公共の場での事故を防ぐためには、インフラ整備が必要なのではと疑問が上がると、沼口氏は「(例として『狭い道路が原因でこどもの交通事故リスクがあったため、道路幅を広げる』という対応を行う場合、)当事者ではないと、道を広げてありがたいくらいの認識しかない。それぞれが他人事じゃないという意識をもつような啓発を続けていくことが大切」と答えた。

続けて、「現在はこどもの事故がとかく特定の誰かの責任になりがちだが、特定の誰かの責任ではなく、システム上の欠陥の方に目を向けるべき。制度上の問題点がどこにあるかを考えていくのが、CDRが目指す方向性」とも話した。

今後の展望については、「CDRの取組が全国的に展開され、地域による底上げが進んでほしい。同時にこどもの死に対する話がタブー視されない社会にしなければならない」と主張した 。CDRが浸透し、こどもたちにとって安心・安全な社会の構築に期待される。

CDRサイト
こども家庭庁/CDRポータルサイト
https://cdr.cfa.go.jp/

インタビュー協力
沼口 敦氏
名古屋大学医学部附属病院 救急・内科系集中治療部 病院講師

1996年名大卒。2004年あいち小児保健医療総合センター循環器科医長。
名大病院小児科病院助教,同院救急科病院助教を経て,18年より現職。
14~20年まで日本小児科学会子どもの死亡登録・検証委員会に所属し,22年からは同学会予防のための子どもの死亡検証委員会委員長を務める。

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