製造業からAWS殿堂入りした唯一の日本人「山下光洋」が考える、必要なIT人材とは?

「Amazon Web Services」、通称AWS。このクラウドサービスはIT企業だけでなく、多くの国内企業でも導入が進む一方、世界中でその存在感を増しています。その中で、日本人で唯一、AWS認定インストラクターアワードを3年連続で受賞し、さらには殿堂入りを果たした方がいます。

これだけ聞くと、ITの世界で長年活躍している技術者と思われるかもしれません。しかし、驚くべきは、彼の前職は製造業で、フォークリフトの運転を担当していました。さらにその前は、ホテルのスタッフ。ITとは一見程遠い職業から、今や注目されるITインストラクターに登りつめた話題の人。

ITの世界へ転身し、AWS認定インストラクターとして殿堂入りした経緯、そして予測が難しいIT業界の未来について、日本人で唯一、AWS認定インストラクターの山下光洋(やました みつひろ)さんからお話を伺うことができました。

-前職はフォークリフトの運転などをされていたのに、なぜAWS 認定インストラクターに?

まず製造業からIT業界への転職を決意したのは、上司の「ITの専門家として活躍できるのでは?」との冗談混じりの助言を受けたためです。
当時は配送担当としてフォークリフトを使用しながら、業務改善のため社内システムの開発に挑戦していました。その後エンジニアとして多くの企業の課題を解決しましたが、外部開発者では手の届かない問題も多かったため、内製開発が出来るユーザー企業のIT部門に転職。

その頃初めて触れたクラウド技術は、初期投資や準備時間の壁を解消し、挑戦をしやすくすると感じたため、抵抗勢力にもメリットを伝え積極的に導入を進めました。同時にクラウドや新技術を使い課題改善や価値創造に挑戦する人々の道筋を開くことを願い、導入事例を公開する中でAWS認定インストラクターの存在を知りました。

厳しい審査をクリアする人が少ない状況でしたが、クラウドのメリットとより良い使い方を伝えることが自身の役割だと感じたためチャレンジを決意し、今に至っています。

-AWSの認定資格の取得についてのアドバイスや勉強法はありますか?

まず、勉強する対象を整理。認定試験の公式試験ガイドには、試験範囲が明示されているので、その「知識、スキル」の項目で知らない部分が勉強する対象となります。

該当項目について公式のドキュメント(サービスページ、ユーザーガイド、FAQ、Black Beltなど)を参照し、チュートリアルなど、手を動かしながら理解を深めていく。公式のサンプル問題や模擬試験で理解度を確認し、分からない分野を減らしていく。ユースケースや解決可能な課題を知ることで各サービスの理解を深めること、ブログや書籍等を活用して公式のドキュメントだけで理解が難しい点を補足することも有効です。

そして最も効果的で試験後も活かせる学習方法は、実際に構築してみることですね。

-実際に行ったプロジェクトを教えてください

多くのプロジェクトがありますが、例えば自動電話受付キャンペーンといったものがあります。

メール、ウェブフォーム、電話での受付を行うキャンペーンにおいて、コールセンターの人員が確保できなかった際、TwilioとAWS(API Gateway、Lambda、DynamoDB)そしてkintoneを組み合わせて電話受付を自動化しました。その結果、人手による対応が不要となり、24時間受付が可能となりました。

他には、匿名質問受付システムの構築。

受講者様からの質問を受け付ける新たなチャンネルとして、サーバーレスアーキテクチャ(S3、CloudFront、API Gateway、Lambda、DynamoDB)を用いて匿名質問フォームを作成しました。現在では、Rocket.ChatやChatGPTと連携し、自動応答機能を備えたボットも実装しています。

-AWSにおける最新のトレンドや注目すべき新機能は何ですか?

全体的なトレンドとしては「Zero ETL」と「非同期なイベントドリブンアーキテクチャ」に注目しています。これらは両方とも昨年のAWS re:Invent 2022でキーノートテーマとなったキーワードです。

「Zero ETL」は、データの加工や連携を自動化し、コーディングを削減し、複雑な設定を避けつつ実装するアプローチを指し、これにより、大量のデータから迅速に価値あるインサイトを引き出すことが可能になります。関連するAWSの新機能は、「Amazon AuroraとAmazon RedshiftのZero ETL統合」、「AWS Clean Rooms」、「Amazon Security Lake」など。これらにより、データ加工の開発を省略したり、他社とのコラボレーションを容易にしたり、同一フォーマットでセキュリティデータを一元管理したりすることが可能となります。

「非同期なイベントドリブンアーキテクチャ」は同時に多発するイベントを非同期的に対応することで効率化をはかる仕組みで、システム構築においても重要な原則。以前からベストプラクティスとして有名な設計ですが、新たにノーコードでイベントをつなげ、GUIでサーバーレスアーキテクチャを構築することが可能なAWSの新機能として「Amazon EventBridge Pipes」や「AWS Application Composer」などが登場したため、改めて注目したいです。

その他、コードを生成する「Amazon CodeWhisperer」、生成系AIの「Amazon Titan」も新たに発表されています。

ただし、真に注目すべきサービスは各企業のニーズによると考えています。AWSのサービスは多様なビジネスニーズに対応し幅広いカテゴリがあるので、どのようにマネージドサービスを組み合わせて設計、構築するかが重要となります。

-これからさらに進むIT化。どのような人材が求められてきますか?

企業価値が高いのは、技術を選択し、組み合わせて、新しい取り組みに素早く挑戦できる人材。そのためには、常に学習し、新しい方法や変化を受け入れ、試行を楽しめる必要があります。

例えばSaaSを活用すれば、自社で一から作るよりも効率的で、自社の要求を満たさない場合も別のサービスへの切り替えが可能に。結果、新しいビジネスの展開や、課題解決が迅速になります。開発者にとっても、素早い開発のために既存のツールやソフトウェアを再利用することが重要です。

逆に、変化を恐れ、避ける人は時代の流れに取り残され、企業としても競争力低下の原因となるため、そのような人材は求められにくくなると思います。

【取材協力】
トレノケート株式会社
https://www.trainocate-holdings.com/
AWS認定インストラクター/ITトレーニング担当講師
山下 光洋(やました みつひろ)氏

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