アサヒグループホールディングスは29日、同社システムへの大規模なサイバー攻撃を受け、国内における飲料・食品の受注および出荷業務を停止している状態が続いていることを明らかにした。

システム障害は29日未明から発生。同社によると、社内ネットワークシステムが広範囲にわたって影響を受けており、お客様相談室などのコールセンター業務も停止を余儀なくされている。現時点で個人情報の流出は確認されていないものの、システムの復旧時期については見通しが立っていない状況だ。
セキュリティ専門家によると、近年の企業を標的としたサイバー攻撃は手口が巧妙化しており、大手企業であっても完全な防御は困難になっているという。今回の事案について、SNS上では「影響が長期化すれば店頭から商品が消える可能性もある」「飲食店への納品にも支障が出るのでは」といった懸念の声が相次いでいる。
流通業界関係者は「年末年始の繁忙期を前に発生した今回の障害は、アサヒグループにとって非常に深刻な事態」と指摘する。実際、同社が実施した緊急アンケートでは、93%以上の回答者が今回の事態を「非常に深刻」と評価している。
一方で、製造現場は通常通り稼働していることから、システム復旧後の出荷再開に向けた準備は進められているとみられる。ただし、受発注システムの完全復旧までには相当の時間を要する可能性があり、取引先や消費者への影響は避けられない見通しだ。
業界筋によると、同社は対策本部を設置し、セキュリティ専門企業と連携しながら原因究明と復旧作業を進めている。また、取引先への代替的な受発注方法の検討も始めているとされる。
文/進藤昭仁