株式会社帝国データバンクは、2023年8月31日までに発生した「円安倒産」の発生状況について調査・分析を行った。
2023年1-8月は47件判明 アパレル関連での倒産目立つ
円安による輸入コスト上昇等が直接・間接の要因となって倒産した「円安倒産」は、2023年は8月までで47件判明しており、すでに前年(2022年:34件)を上回るなど、円安倒産が再び急増している。
このペースが続いた場合、2023年の年間倒産件数は70件台に到達し、2016年(98件)以来7年ぶりの水準に近づく見込みである。
2023年の47件を業種別に見ると、「卸売業」が24件で最多、全体の半数以上を占めた。
次いで、「小売業」が12件と続き、「卸売業」と合わせて全体の約77%を占める。
特に、繊維原料や衣料製品を輸入に依存する繊維・アパレル関連(製造・卸・小売)が16件と目立ち、コロナ禍で売り上げが落ち込んでいるなかで円安による輸入コスト増が追い打ちをかけ、事業継続を断念するケースがみられた。
円安は総じて、輸出企業の売上増加に繋がるほか、インバウンドなどの消費を押し上げるなどメリットも大きい。
しかし、輸入価格上昇により物価高騰が長期化するなか、企業でも円安のマイナス面が顕在化し、円安による原材料やエネルギー価格の高騰が、企業経営に与える影響が高まってきている。
進む円安基調 増加するコスト負担が企業経営の重しに
9月5日の東京外国為替市場で、円相場は一時1ドル=147円台に値下がりし、2022年11月以来10カ月ぶりの水準まで円安ドル高が進んだ。
欧米との金利格差が縮まらないことで、米ゴールドマン・サックスなどが円の対ドル相場予想を円安・ドル高方向に修正するなど、今後も円安基調が続くとみられている。
足元では、ガソリン価格が16週連続で値上がりしているほか、10月に大手電力10社すべてで電気料金の値上げが予定されているなど、円安の押し上げにより燃料費や電気代の高騰が続く。
こうしたエネルギーコスト増加が、ポストコロナで本業を十分に立て直せていない中小・零細企業の経営に追い打ちをかける形で、「円安倒産」はさらに増加する可能性がある。