三井不動産、「社長AI」を開発した真意 全社員導入で「業務1割削減」狙うDXの全貌

三井不動産は12月23日、米OpenAI社の「ChatGPT Enterprise」を全社員約2000人に導入し、本格運用を開始したと発表した。

 単なる既存ツールの導入にとどまらず、自社の業務や文化に特化した「独自AI」の内製開発に踏み込んだ今回のDX戦略。その象徴と言えるのが、同社の植田俊社長の思考を再現した「社長AIエージェント」。

 これは植田社長の公開情報や過去の発言、キャリアの転機となったプロジェクト、さらにはプライベートなエピソードまでを学習させたものだ。社員はこのAIとの対話を通じ、社長の視点から経営戦略を理解したり、壁打ち相手として日々の判断に活かしたりできるという。経営トップの「分身」をAI化し、現場との距離を縮めるという試みは、日本企業のDXにおいて珍しい事例と言えるだろう。

 このほか、DX本部長の性格や判断基準を学習させた「DX本部長AIエージェント」も開発。すでにDX本部内で導入されており、資料作成時の事前レビュー役として活用した結果、資料修正にかかる時間を平均約30%削減することに成功したという。上司の意向との不整合による「手戻り」を防ぐ実利的な効果が証明された形だ。

 

こうした開発を支えるのは、現場主導の推進体制だ。同社は全社85部門から150名の「AI推進リーダー」を選出し、現場のニーズに即した「カスタムGPT」の開発を推奨。導入からわずか3カ月で、すでに約500件もの業務特化型AIが運用されている。経理処理のアシスタントやプレスリリースの下書き支援など、現場の「困りごと」を解決するツールが次々と生まれている。

 同社はこれらの取り組みにより、全社で業務時間を10%以上削減することを目指す。単なる効率化だけでなく、資料の自動生成AIなども活用することで、社員がより付加価値の高い業務に集中できる環境を整備する狙いもある。

 不動産業界の雄が仕掛ける「社長AI」と「現場主導」の両輪によるDXは、日本企業の生産性向上における新たなモデルケースとなるかもしれない。

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