国立社会保障・人口問題研究所が発表した最新の「日本の世帯数の将来推計」によれば、2040年には多くの都道府県で平均世帯人員が2人を下回り、単独世帯の割合が大幅に増加することがわかった。特に高齢者の単独世帯が増えることが予測され、孤独死や住宅問題などの社会的課題が顕在化する可能性が高い。この推計結果を基に、日本社会が抱える問題点と今後求められる対策を考察してみたいと思う。
この「日本の世帯数の将来推計」の中で気になるのは、単独世帯が全国的に増加し、特に東京ではその割合が2050年に54.1%に達する点である。未婚率の上昇や高齢化、子どもの独立が進むことで、核家族化から個人単位への移行が急速に進んでいる。社会の基盤が家族単位から個人単位へと変化しつつあるのがわかる。
しかし、この変化に対し、社会制度が追いついていないことが課題でもある。例えば、社会保障や住宅政策は未だに家族単位で設計されている部分が多く、単身高齢者や未婚者が適切なサポートを受けられない状況も見られる。特に、単身高齢者の増加に伴い、彼らが賃貸住宅を借りにくい現状も深刻化している。不動産オーナーが孤独死による事故物件化を懸念するため、高齢者が安心して住める賃貸住宅が不足している。これに対して、家賃保証制度や高齢者向けの住宅補助金制度の充実が求められる。
また、2050年には65歳以上の単身世帯が全国で約1084万世帯に達すると推計されており、このうち32道府県では全世帯の20%以上を占める。この増加は孤独死や社会的孤立のリスクを高め、地域社会における福祉サービスの負担を増大させる可能性がある。高齢者が安心して生活できる賃貸住宅や支援体制を確立することが急務である。
さらに、未婚率の上昇や少子化の影響により、若年層も結婚を選ばず、単身世帯を構成する傾向が続くと予想される。この変化は社会的価値観の多様化を反映しているが、同時に家族や地域の絆が希薄化する懸念もある。これに対応するため、個人が孤立しないよう、地域コミュニティやデジタル技術を活用した新しいつながりの形を構築する必要がある。
日本の世帯構造は今後30年間で劇的に変化し、単独世帯が主流となる社会が訪れる。この変化に対応するためには、家族単位の社会から個人単位の社会への移行を見据えた政策転換が必要だ。高齢者や未婚者が安心して生活できる住宅環境の整備、孤独死のリスクを軽減する支援体制の確立、そして個人と地域をつなぐ新しいネットワークの構築が求められる。社会の多様化を前向きに受け入れつつ、誰もが安心して暮らせる仕組みを築くことが、日本の持続可能な未来を支える鍵となるだろう。
国立社会保障・人口問題研究所
『日本の世帯数の将来推計(都道府県別推計)』(令和6(2024)年推計)
https://www.ipss.go.jp/pp-pjsetai/j/hpjp2024/t-page.asp
文・野島カズヒコ