マネキンから学ぶ社会課題の変遷、トーマネが考える環境やジェンダーレス問題への取り組み

3月23日、株式会社トーマネは「マネキンで見る社会課題の変遷」をテーマとしたプレゼンテーションをメディア向けに行った。3月24日のマネキン記念日に合わせた開催となり、環境問題や脱プラスチック、ジェンダーレスなど、これまでの様々な課題に対する取り組みを紹介した。

プレゼンテーションのテーマは大きく3つに分かれた。ひとつ目は「FRP(繊維強化プラスチック)の環境問題に対する取り組み」。FRPは軽くて強く、熱による変形もなく修理が可能でありながら、着色も自由にでき生産性が高くローコストという特徴があり、トーマネのマネキンの素材として使用されている。

FRPの導入理由について、日本のマネキンは世界で唯一レンタルというシステムで採用されていることが挙げられている。レンタルで貸し出した際は、マネキンのメンテナンスや塗装替えをその都度行う必要があり、FRPはこのようなメンテナンスに対応できるからだという。

環境問題に関しては、トーマネのマネキンはレンタル後の再利用と、廃棄されるマネキンのリサイクルという対応をとっている。レンタル期間が終了したマネキンは、デパートなどから回収してメンテナンス後に再びレンタルされることもある。廃棄されるマネキンは、マテリアルとサーマルの2種のリサイクル方法で100%リサイクルされているとのこと。

ふたつ目のテーマは「和紙マネキンWaltzと脱プラスチック」。和紙マネキン「Waltz」とは、茨城県常陸大宮市で350年続いている無形文化財「西ノ内和紙」を原材料として使用しているマネキン。FRPを使用している従来のマネキンと比較して約80%減の軽量化が実現されている。製品名の「Waltz」は、和紙がルーツの製品ということから、海外でも通用する発音の「Waltz」(和+Roots→和ルーツ→Waltz)と命名されたとのことで、マネキンとワルツが踊れるほど軽いという意味が込められている。

物作りの企業として「見たことのないもの」をテーマに商品開発を行ってきたなかで、SDGsに沿った環境・文化・地域貢献などを取り入れている和紙マネキンを開発することになったそう。トーマネが工場と物流倉庫を構えている茨城県に、地元で栽培した那須楮を使用した「西ノ内和紙」があり、その手作業の文化と伝統をアピールするきっかけになるというのも開発理由のひとつになっている。

従来の製品と和紙マネキンの違いに関しては、環境に配慮したナチュラル素材であること、和紙独自の質感や見た目、製造過程で有機溶剤を使用しないこと、研磨による粉塵が出ないこと、軽量化により従来製品の約20%の重量になっていることが挙げられている。軽量化は経済的メリットが大きいということで、輸送コストや組み立てに関する重労働や労働時間の削減に繋がっており、積み下ろしや設置にかかる労働時間も削減できるとされている。

和紙マネキンのプロトタイプでは、和紙の造形でどこまでできるかを追求するため、汎用性や使いやすさを度外視したフレキシブルなポーズで造形の限界を突き詰めていたという。その中で、紙片検査を何度も繰り返し、強度を高めることや制作スケジュールを早めるために作業工程を見直し改良されていき、製品版が完成したそうだ。

製品の婦人と紳士の2パターンは、衣類を着させるマネキンとしての使いやすさと見栄えのするフォルムとなっている。また、人型以外にもブルドッグやネコのマネキンも制作されていて、四肢にマグネットが装着されていて和紙製で軽いため、壁にもくっつけられるようになっている。

三つ目のテーマは「Heartfulとジェンダーレス」。「Heartful」は、技術力と発想力を駆使した開発商品「KEREN」シリーズとして制作されており、様々な人との繋がりの形や心の温まるような関係性などを表現したマネキン。また、「Heartful」はマネキンとしては珍しくペア仕様になっていて、ペアで使用することで温かい関係性が表現されるようになっている。塗装に関しても様々な研究をし、温かみのある色彩が取り入れられている。すでに同性型のペアでの展示も行われていて、マネキンによるジェンダーレスが表現されている。

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