ソフトバンクは2025年3月期第2四半期決算で、売上高3兆円を突破する過去最高の成果を達成した。通期業績予想の上方修正や、全セグメントでの増収など好調な結果が目立つ一方で、通信業界全体の値下げ競争や市場シェア重視の経営からの脱却など、課題も表面化した。今回の決算発表を基に、成長を支える要因と、それに伴うリスクを分析していく。
ソフトバンクの業績好調の背景には、複数セグメントでの成長がある。コンシューマー事業では、スマートフォン契約者数の増加や「ペイトク」プランの成功が貢献。さらに、エンタープライズ事業では、ソリューション分野が28%増と顕著な成長を示し、法人売上の拡大を支えている。特にAIサーバー販売が創薬企業などからの需要を集め、外部売上が5倍に拡大している点は注目だ。
ファイナンス事業では、PayPayが2期連続で黒字化を達成し、取扱高7.2兆円を記録した。同事業はグループ横断型の取り組みで始動し、現在ではソフトバンクの非通信事業の中核となっている。これらの多角化と構造改革の結果、ソフトバンクは通信依存型のビジネスモデルから脱却しつつある。
値下げ競争のジレンマ
一方で、通信業界全体での値下げ競争が同社にとって悩みの種となっている。宮川社長がahamo対抗策に言及したように、競争に応じざるを得ない状況が続く中、利益率低下への懸念がある。特に「純増を追わない」という方針転換は、競争激化の中で利益を維持し、ARPU(1契約あたりの平均収入)の向上を目指す戦略に基づいているが、市場でのシェアをどう維持するかは依然課題だ。
宮川社長の「通信料金だけが下がり続けるのは問題」という発言は、業界全体の持続可能性に対する懸念を反映している。この視点は重要であるものの、消費者からの値下げ圧力や競争環境にどう対応するか、同社の柔軟な舵取りが求められる。
SB C&Sを中心に、ソフトバンクグループ内の協力体制が成果を上げている。AIサーバーやサブスクリプションモデルの普及は、グループ全体のシナジーを活かしたものだ。しかし、こうした成功例がある一方で、PayPayのIPOが暗示するように、新規事業の収益化には依然課題がある。また、GPU供給不足といった外部要因が事業拡大の足かせとなるリスクも存在する。
今後の焦点は、多様化する事業領域の収益安定化と、競争環境の中での差別化にある。消費者と業界の双方に目を向けたバランスの取れた経営が求められる局面と言えよう。
執筆 / 菅原後周