AIの進化が日常生活に浸透する中で、人間の仕事に大きな影響を与えるのではないかという議論が絶えない。AIを用いた技術革新により、多くの職業が効率化される一方、AIに取って代わられる仕事も増えてきている。例えば、数十か国語への翻訳業務や議事録作成がわずか数秒で完了したりと、かつては人間が主導していた作業の多くがAIに委ねられつつある。
フューチャリスト友村晋氏の書籍『2045 不都合な未来予測48』では、「人間がテクノロジーを使いこなす側と競う側に分かれる」と述べられている。将来的にどのように自分のスキルを活用し、仕事を見つけるのかが鍵となるだろう。AIが普及することでどのような職種が必要とされ、またどの職種が消えていくのかを考えることが重要ではないだろうか。
AIによる影響はすでに具体化している。ChatGPTをはじめとした生成AIが登場してから、特に事務職やプログラムのバグ修正といった定型的な業務がAIに置き換えられやすい職種として挙げられている。日本国内では、約半数の職業が10〜20年後にはAIに代替可能と推計されており、影響を受ける可能性が高い職種として事務職や運転手、警備員などが挙げられている。この現実に対し、SNS上でも「AIによる効率化は避けられないが、それが雇用を減らす原因になる」という声が多い一方で、「AIは人間の補助にとどまり、新たな雇用を生む可能性もある」という楽観的な意見も見受けられる。また、先日正式に公開された自律型AIソフトウェアエンジニア「Devin」の登場で、エンジニアたちの中でも将来への不安が急激に広がっているようだ。
一方で、AIに奪われにくい職業も存在する。それは、精神科医や教育者のように人間の感情に深く関わる仕事、あるいはデザイナーやゲームクリエイターのように創造性が求められる仕事だ。これらの分野では、AIがまだ完全には代替できないため、今後も需要が続くと考えられている。また、AIそのものを開発・運用するためのAIエンジニアも需要が高まるだろう。
特筆すべきは、AIをうまく活用できるかどうかで「いきいき会社員」と「ヨボヨボ会社員」という格差が生まれるという指摘だ。例えば、会議資料の作成や議事録作成などの業務が効率化されることで、生成AIを活用できる社員は時間を他の重要な業務に割けるが、AIを使いこなせない社員は生産性の低下に悩むことになる。これは単なるスキルの差というより、AIへの適応力の有無が将来の職場での立場を左右することを意味しているのではないだろうか。
また、セルフレジのように、すでに人員削減が目に見える形で進んでいる分野もある。こうした事例から、DX・AIの導入が業務効率化に貢献しつつも、人間が「何をすべきか」を再考させるきっかけになっているといえる。
AIの普及により、労働市場は大きな転換期を迎えている。従来の仕事の多くが効率化される一方、AIに取って代わられる職業も少なくない。こうした中で、重要なのはAIと競争するのではなく、AIを使いこなして新たな価値を生み出す側に回ることだろう。
そのためには、AIの技術を理解し活用できるスキルを身につけることが求められる。営業や企画職といった、より付加価値を生み出す役割にシフトする動きも必要になるだろう。加えて、教育者や医療従事者のように感情や人間味を必要とする職業の重要性も再認識されるべきだ。
AI時代を生き抜くには、「どのような能力を身につけるべきか」を考えることが不可欠。AIの進化は止められないが、それを人間の可能性を広げる手段として活用する道を模索することこそが、これからの未来における鍵となるだろう。
執筆 / 菅原後周