福井県内に北陸新幹線が開業して1年が過ぎ、好影響とともにこれからの課題も徐々に見えてきた。
福井駅周辺は大規模な再開発が進行。北陸新幹線開業に合わせて「福井の食」 などを集めた複合施設 「M I N I E」もオープンした。さらにセールスポイントである「恐竜王国」を押し出すため、恐竜のモニュメントも増加。実際に福井県へ足を運ぶと、福井駅周辺の恐竜のモニュメントの前では、地元の親子連れから観光客まで幅広い層が記念写真を撮るなどして楽しむ様子が見られた。

福井の観光来場者数は前年度を大幅に上回り、2024年の観光客増加率は全国トップに(3月15日付『福井新聞 ONLINE』)より)。数字面では、福井の街は着実に良い方へ向かっていることが分かる。

その一方、飲食店の従業員に話を訊くと「北陸新幹線が開業してすぐは店にもお客さんがたくさん来て、賑わったのですが…」と表情を曇らせる。続けて「開業から1年が経ち、客足も落ち着いてしまいました。本音を言うと、もうちょっと客足が伸びて欲しい」と口にした。
新規の飲食店が苦戦している要因として考えられるのは、北陸新幹線開業による観光客を目当てにし過ぎた料金設定にあるのではないだろうか。金額は、ランチメニューでも一品1000円はゆうに超える。福井の名産である海鮮料理などを使ったメニューは1000円台後半から2000円台が当たり前。ここまで“高額”だと、地元の人は気軽に立ち寄りづらい。福井駅前の店舗を見ていても結局、全国チェーンのカフェ、ファストフード店の方が混雑している。


また、福井県にやって来た観光客が不満を感じている二次交通の問題もはっきり浮き彫りに。福井県の一番の観光名所である東尋坊は、福井駅からさらに電車、バスを乗り継がなければたどり着くことができない。福井県立恐竜博物館も、福井駅からえちぜん鉄道への乗り換えなどが必要だ。
地元メディアの関係者に訊いても「福井駅に着いても、じゃあその後どうするのか。結局『車がないとどこにも行けないじゃないか』となるんです。観光スポットはいずれも福井駅から離れたところにありますから。レンタカーの需要は高まってはいるものの、隅々までとなると、なかなかそうはいかない」と話す。
芦原温泉旅館協同組合の奥村紘生委員長もやはり、「二次交通の問題はこれから重点的に取り組むべき」だとする。奥村委員長は「北陸新幹線開業で関東方面のお客様が増えましたが、やはり『交通が弱い』というお声をよく聞きます。そういったご意見についてはこちらからも各所に提言し、早期改善を望みたい」とする。

くわえて奥村委員長は「今は北陸新幹線開業でメディアの目も福井県に向いていますが、2年、3年と経過すると当然、関心が薄れていきます。その間に、次に何をするかを考えて、動いていく必要がある」と、特需とともに少し危機感も抱いていると明かす。
福井県では北陸新幹線のさらなる延伸が期待されている。小浜・京都ルートか、米原ルートかで意見が割れているほか、着工スケジュールも不透明。しかし延伸が実現すると、大阪、京都を含めた西日本各地からの観光客やインバウンド客を狙うこともできる。それらの需要に応えるためには、交通の利便化、新たな観光スポットの開発などもあわせて進めていかなければならない。