3月7日、武蔵野美術大学市ヶ谷キャンパスにて、クリナップが「未来キッチンプロジェクト」産学共同発表会を開催した。そこで、電気・水道が無い場所でも調理ができる移動式「次世代キッチン」のプロトタイプが公開された。
同社は2019年より、武蔵野美術大学と未来キッチンのビジョン研究を開始。ビジョンの事業化を実現するために、 2023年2月に「未来キッチンプロジェクト」を始動した。もっと暮らしとキッチンが<自由になること>、災害時に<地域社会で助け合うこと>を目標に、“脱LDK”を1つ目の開発テーマに掲げ、活動を実施。
今回、武蔵野美術大学との産学共同で生まれた構想を元に、フィルター製作等を行っている三美製作所と「ろ過装置」を用いた野外での実証実験を行った。その結果、水道が無い場所でも、水を循環させることで使用できるシンクを実現。
本発表会では、実証実験の結果をもとに製作された次世代キッチンのプロトタイプが初公開され、クリナップ開発戦略部商品戦略課の近岡咲主任がサービス概要について説明した。
モビリティキッチンは給排水という家との繋がりをなくすことで、住宅設備から脱却し、場所を選ばない自由な調理と新しいライフスタイルを提案する。モビリティキッチンはシンクユニット、ワークユニット、コンロユニットの3つから成り、1ユニットのサイズは持ち運びやすさと料理の利便性を両立するマチ600ミリ、奥行480ミリ、高さ200ミリ。それぞれが独立しているため、配置を変えて新たな生活シーンを作ることが可能で、近岡氏は「これからの料理は、使う人にキッチンが合わせてくれる」とプレゼンする。
シンクユニットには、循環ろ過装置が搭載。吐水された水は、装置の下部のくぼみに戻っていき、その水を装置が吸い上げて水が循環する仕組みだ。また、循環ろ過装置に収められた2つのフィルターが互いに洗浄しあう逆洗浄機能をもち、災害時でも独立して長時間稼働できる設計になっている。
今後クリナップは、本プロトタイプに限らず、複数の未来のキッチンモデルの検証を行っていくとされる。
なお、本発表会中には、武蔵野美術大学山崎和彦特別研究員が審査委員長を務めた「未来キッチン イラストコンテスト」の最優秀賞授与式も行なわれた。最優秀賞を受賞した千葉市立士気南小学校3年の西岡さんは「3,000作品の中から選んでいただき光栄です。ありがとうございます」と挨拶し、戦争でご飯が食べられない人がいる現状から着想を得て、そんな問題を解決できるよう製作したものだと紹介した。描いた作品を立体化したモデルが授与されると、「思っていたよりすごいです。歯が鋭くペットボトルを食べててかっこいいです」と喜びを見せていた。