インターネットのアーカイブ閲覧サービスを提供する団体「インターネット・アーカイブ」がサイバー攻撃を受け、3100万人のユーザー情報が流出したことがニュースになった。
サイバー空間における脅威が一段と深刻化しているようだ。
警察庁が公開した令和6年上半期の報告書によると、ランサムウェア被害やフィッシング事案が増加傾向にあり、新たな手口も登場しているという。
生成AIを悪用した攻撃も出現、進化するサイバー犯罪
世界各地でサイバー攻撃が相次ぐ中、日本の政府機関でもDDoS攻撃とみられる被害が発生した。ランサムウェア被害の報告件数は114件に上り、流出情報がダークウェブ上に掲載される事態も確認された。注目すべきは、生成AIを悪用した事案の出現だ。
ぜい弱性を探る不審なアクセスも増加の一途をたどっている。その大半が海外からのアクセスであり、国境を越えた脅威が広がっている。
SNSが新たな犯罪の温床に、警察の対応強化
インターネット空間を悪用した犯罪も深刻化している。SNSを通じた投資詐欺やロマンス詐欺、暗号資産を利用したマネー・ローンダリングなど、新たな手口が次々と登場しているのが現状だ。
フィッシング報告件数は63万3,089件、インターネットバンキングの不正送金被害額は約24億4,000万円に達した。さらに、SNS上には犯罪実行者募集情報が氾濫し、治安上の重大な脅威となっている。
こうした状況に対応するため、警察庁は令和6年4月、サイバー特別捜査隊をサイバー特別捜査部に改組。捜査体制の強化を図った。同部は国際共同捜査にも参画し、ランサムウェア攻撃グループ「LockBit」の被疑者2名を検挙するなど、早くも成果を上げている。
サイバー空間の脅威は、技術の進化とともに複雑化・巧妙化の一途をたどっている。個人情報の保護や重要インフラの防衛など、社会全体で取り組むべき課題は山積みだ。今後、官民一体となった対策の強化が求められる時代になるだろう。
サイバー空間をめぐる脅威の情勢等
令和6年上半期におけるサイバー空間をめぐる脅威の情勢等について(9月19日)
https://www.npa.go.jp/publications/statistics/cybersecurity/
執筆 / 菅原後周