テレビ朝日が、Google Cloudの動画生成AI「Veo」の本格活用に乗り出すようだ。2025年夏にAIを経営の柱と位置づけ「AI推進部」を新設した同社の取り組みは、3月9日にGoogle Cloudの公式顧客事例ページでも紹介され、放送業界におけるAI活用の先進事例として広く注目を集めている。
導入の核となったのが、2025年6月から8月にかけて実施した社内企画「生成AI動画コンテスト」だ。応募資格は全社員で、現場のクリエイターにとどまらず、バックオフィス部門を含む幅広い層から50以上の作品が集まった。AI推進部のメンバーが参加者一人ひとりの「伴走者」として技術支援から著作権ガイドラインの個別指導まで徹底的にフォローした。
Veoを採用した最大の理由は、その圧倒的な映像クオリティと、商用利用における権利関係の明確さにある。技術担当の山口氏は「通常、海外ロケや大規模なCG制作が必要な映像が、PC1台で生成できてしまう。人物の動きや環境音まで含めた”その場の空気感”を一瞬で作り出せる点に、従来の制作フローを根底から変える可能性を感じた」と語る。コンテスト作品の中には、社屋や廊下を撮影した写真をベースに非現実的な世界を合成した映像も登場。「AIか実写か判別がつかない」と社内で大きな反響を呼んだ。
運用面では独自のガバナンス体制も整備した。誰がいつどのようなプロンプトで生成したかを記録するログ管理システムを構築し、著作権保護とコスト管理を徹底。自然言語をAIが理解しやすい構造に変換する「プロンプト構造化機能」も実装し、意図した映像を引き出しやすくした。
コンテストを経て、社内では「Veo」という言葉が日常会話に浸透し、AIへの心理的ハードルが大きく下がったという。今後はドラマの背景映像補完やバラエティ番組のネタ映像、再現VTRへの活用など、実際の地上波放送での実装に向けた検討も始まっている。Google Cloudの顧客事例としてもお墨付きを得たテレビ朝日のAI活用は、リテラシー向上の段階から、コンテンツ制作の現場実装へと、着実に次のステージへ移行しつつあるようだ。
テレビ朝日:生成 AI 動画コンテストを機に Veo を本格活用。番組制作の未来を語る
https://cloud.google.com/blog/ja/topics/customers/tv-asahi-begins-full-scale-utilization-of-veo

