メルカリ、新たな広告事業「メルカリAds」本格展開
株式会社メルカリは2025年2月6日より、同社が運営するフリマアプリ「メルカリ」内での広告事業「メルカリAds」の本格運用を開始した。本事業は、検索結果画面において検索キーワードに応じた広告を掲載する仕組みで、クリック課金型広告となる。
メルカリAdsには、外部サイトへ誘導する「オフサイト広告」と、メルカリ内のショップページへ誘導する「オンサイト広告」の2種類がある。オフサイト広告には、EC事業者向けの「Product Ads」と、幅広い業種に対応する「Infeed Ads」が含まれる。オンサイト広告は、「メルカリShops」における商品の表示機会を増やす目的で提供される。
広告事業参入の背景 成長するリテールメディア市場
日本の広告市場は年間7兆円を超え、そのうちインターネット広告が約45.5%(約3.3兆円)を占めている。特に、リテールメディア広告市場の成長が著しく、2024年には4,692億円、2028年には1兆845億円に達すると予測されている。
メルカリは月間アクティブユーザー2,300万人を誇る大規模プラットフォームであり、膨大な購買データを活用することで、広告主にとって魅力的な市場を提供できると判断したとされる。また、メルカリ利用者の多くが「売ったお金で新しいものを買う」「趣味の充実のために利用する」といった目的で利用しており、購買意欲の高いユーザーが多い点も、広告配信に適していると考えられている。
収益多角化の狙い!手数料依存からの脱却?
メルカリはこれまで、主に出品手数料や販売手数料による収益モデルを採用してきた。しかし、近年は競争の激化や取引トラブル、手数料の高さに対する利用者の不満が増しており、新たな収益源の確保が急務となっていた。広告事業の導入は、こうした課題を解決するための一手と考えられる。
また、Amazonや楽天市場などのECプラットフォームがすでに広告事業を活用して成功を収めていることも、メルカリの判断を後押ししたとみられる。検索結果に広告を表示することで、メルカリShopsの売上向上や外部ECサイトへの送客を促す狙いがある。
利用者からの懸念 「広告は邪魔」「手数料を下げるべき」
しかし、SNS上では「広告を増やすくらいなら手数料を下げてほしい」「検索結果が見にくくなるのは困る」といった否定的な意見が多く見られる。特に、メルカリの検索機能に対する不満は以前から指摘されており、広告の導入によって使い勝手がさらに悪化するのではないかという懸念が強まっている。
また、一部のユーザーは「広告収益を増やそうとするのは、メルカリが追い詰められている証拠では?」と指摘しており、フリマアプリ市場における競争の激化や、ヤフオクやラクマなど他のプラットフォームへのユーザー流出を危惧する声もある。
メルカリAdsの成功には、広告表示の質とユーザーエクスペリエンスのバランスが鍵となる。検索結果画面における広告の表示方法が、ユーザーの利便性を損なわず、購買意欲を促進する形で実装されるかが重要だ。
また、広告主にとっても、メルカリAdsの費用対効果が期待に応えるものでなければ、継続的な出稿は難しくなる。特に、高額転売や偽ブランド品の出品が問題視されるメルカリにおいて、広告を出すことが企業のブランドイメージに悪影響を及ぼすリスクも考えられる。
メルカリAdsは吉と出るか凶と出るか?
メルカリAdsの導入は、メルカリにとって収益多角化の新たな一手であることは間違いない。しかし、ユーザーの利便性や広告主のメリットを十分に考慮しなければ、逆に「メルカリ離れ」を加速させる可能性もある。
利用者にとって広告がどのように映るのか、メルカリは慎重に運用し、必要に応じて調整を行うことが求められる。
執筆 / 菅原後周