消費者庁が大正製薬に対し、サプリメント「NMN taisho」の広告について景品表示法違反を指摘した件が話題となっている。今回の問題は、広告であることを明確に示さなかったステルスマーケティング(以下、ステマ)が原因だ。この事件を通じて、大手企業が抱える広告手法の透明性や、消費者への影響が改めて問われている。本稿では、問題の背景とSNSでの意見を交えつつ、この問題を深掘りしていく。
まず、今回のケースで注目すべきは、Instagramの投稿がLP(ランディングページ)上で広告であると明記されなかった点だ。これは、消費者が広告であると気付かずに、あたかも一般人の感想のように受け取る可能性が高い。ステマは消費者の購買意欲を巧みに操作する一方、選択の自由を奪う恐れがある。こうした手法が信頼の損失を招くリスクについて、SNSでも多くの意見が出ている。
例えば、SNS上では「大手企業でステマが行われているのは氷山の一角だ」「インフルエンサーがPR表記を隠して投稿している例もある」といった声が目立つ。これらの意見から、ステマが広告手法の一部として広く浸透している現状もわかってくる。さらに「広告であることを隠す手法は消費者を欺く行為だ」といった批判も多く見られ、企業の倫理観が問われる事態となっているようだ。
ただ一方で、「ステマが完全になくなるのは難しいのではないか」とする意見も存在する。例えば、スポーツや文化事業の振興が国策として行われてきた歴史や、企業が宣伝のために会員や口コミを活用すること自体は昔からあることだとの指摘だ。このような視点は、ステマ問題を「新しい課題」として捉えるだけでなく、広告と消費者の関係を再考する契機にもなり得るのではないだろうか。
また、規制が進む一方で、消費者側にも「広告を見抜く力」が求められることも重要だ。専門家であれば広告と本物の口コミを見分けるのは簡単だが、一般消費者にとっては難しい場合が多い。こうした状況においては、企業側が透明性を確保しつつ、消費者教育を促進することが課題となるだろう。
今回の大正製薬のステマ問題は、広告の透明性や企業の倫理的責任を考えるうえで、重要なケースだと言える。景品表示法の改正によりステマが規制される動きがある一方で、完全に根絶するには時間がかかるだろう。それでも、企業が積極的に透明性を高め、消費者の信頼を獲得する努力を続けることが必要だ。
消費者としても、情報を多角的に捉え、広告であるか否かを見極める力を育てることが求められる。そもそも他人の意見で購入するか否かを判断すること自体もどうかと思うが。これからの広告のあり方は、企業と消費者の双方が歩み寄り、信頼を築く形で進化していくことが望ましいのではないだろうか。
文・野島カズヒコ