【コラム】TikTok創業者が中国一の富豪に! その急成長の裏に潜むリスクとセキュリティ懸念

バイトダンス共同創業者の張一鳴氏が、中国で最も裕福な人物となったことが報じられた。中国のシンクタンク「胡潤研究院」によると、張氏の資産は2023年から43%増加し、約7兆5000億円に達している。張氏はバイトダンスの経営から退いたものの株式の20%を保有しており、TikTokと中国版「抖音(Douyin)」の成功により、企業価値と個人資産が急増した。このニュースに対し、ネット上ではTikTokに対する地政学的リスクやサイバーセキュリティの懸念も交えて様々な意見が飛び交っている。

まず、バイトダンスは企業の買収によって成長してきた。技術を強化するために、ロンドンの音楽生成企業Jukedeckなど少なくとも17社を買収し、TikTokをはじめとするアプリのアルゴリズムやコンテンツを高度化した。この技術的基盤がTikTokの魅力を高め、利用者の急増を支えてきたことは明らかだ。しかし、TikTokはアメリカをはじめとする多くの国で国家安全保障リスクが指摘され、特に米国では2025年にTikTokが禁止される可能性がある。さらに、日本国内でも一部の企業がセキュリティ上の理由からTikTokの利用を禁止している。

SNS上の意見には、個人利用と企業利用の線引きについての見解も見られ、「プライベートでは利用するが企業では避けるべき」とする声が多い。この背景には、TikTokが中国企業であることから情報漏洩や監視リスクが懸念されていることがある。特に米中対立が激化する中、アメリカによるTikTokへの売却要求や法的圧力が強まるにつれ、他国でもTikTok利用への疑念が高まりつつある。これにより、企業が公式にTikTokを使用することへの慎重な姿勢が広がっていることがわかる。

張氏の資産増加とTikTokの成長は、中国企業が世界市場で存在感を増す象徴的な事例であるが、同時にグローバル展開にあたっての課題もでてきている。特に米国市場での規制強化や、日本でのセキュリティ意識の高まりは、バイトダンスとTikTokの成長にブレーキをかける可能性がある。また、中国国内においても、広告収益の伸び悩みや新興企業の台頭による競争激化により、バイトダンスの利益は減少傾向にある。

張一鳴氏の成功とバイトダンスの成長は注目すべき事例であり、その企業戦略やAI技術の活用は称賛されるべき点も多い。しかし、国家間の安全保障リスクや経済制裁の影響から企業が直面する課題も明確である。中国企業の急成長が引き起こす影響は一過性のものではなく、特にTikTokのようなグローバル展開を狙う企業にとっては、今後も慎重な対応が求められるであろう。

執筆 / 菅原後周

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