政策改革・イノベーション研究所は、「政策改革・イノベーションシンポジウム 技術革新とハームリダクション-たばこと地方自治との新しい関係」と題した第3回シンポジウムを10月1日に開催。同研究所代表 蔵研也氏がモデレーターを務め、藤井あきら 東京都議会議員、遊佐大輔 横浜市会議員とともに、たばこによる健康問題を技術革新と税制改革によってどのように改善するかについて議論が行われた。
代表の蔵氏は「うちの研究所というのは、技術革新、たばこに限らないんですけれども、社会問題というのはいろんな意味でも解決できうる時がいろんな技術があるにも関わらず、政治的に止まってるという現実があるので、そういったことを主に話し合おうと。それで、提案していこうということで集まった会です。今日は藤井先生と遊佐先生にお話を伺いたいなと思っています」と主旨を説明。
東京都議会議員の藤井氏は「選挙区は町田市の選出で、支部の方で活動をしています。 都議会の方では、たばこに関することですと、受動喫煙の防止の条例というのが2019年にできていて、国の健康増進法だったり、オリンピックに向けて海外の基準に合わせるといった形で受動喫煙の防止対策などを進めておりました、という話などをこの後できればいいのかなと。
私は元々IT企業のマイクロソフトで働いており、デジタルとかスタートアップなどの政策を中心にやっていて、まさにイノベーションがどのように社会問題であったりとか都政を良くできるかといったことに関して日頃活動をしております」と自己紹介した。
横浜市のたばこ税問題 遊佐横浜市会議員の視点
横浜市会議員の遊佐氏は「20歳そこそこの頃に住み込みのゴミの民間のゴミ工場で就職をして働いてたところ、たまたま地元の議員である菅義偉 元総理大臣を応援していた選挙区の会社だったんです。会社からお前手伝ってこいって言われて手伝いに行ったのがきっかけで、今からもう20年ぐらい前になりますけれども、菅事務所に秘書として入り、そこから29歳で横浜市会議員に立候補をして、今4期目を迎えています。
横浜でもかなりたばこの話題は出ます。東京都はやっぱりたばこに厳しいので、今日は横浜との比較をしながらですね、皆さんと一緒に私も改めて勉強させていただければと思っています」と、議員になってからこれまでの経緯などを伝えた。
遊佐氏はたばこ税について「横浜市の場合は、基本的には神奈川県が受動喫煙の政策という大きなものは作っています。なので、横浜市議としては神奈川県の政策に関わることは基本的にはできません。ただ、税金は市に入ってくるんですね。各自治体に。横浜の場合は1年間で大体全体の予算が3兆円くらいあるんですね。
今、人口が約370万人で3兆円ぐらいの規模で都市を運営している中、たばこ税の収入が232億円もあるんですよ。でも、一方で規制をしてくるのは県なんです。『おいおい、ちょっと待て』と。あなたたちの財源に入らないのになんで厳しくされなきゃいかんのよ、ということで神奈川県と横浜市の戦いが実は生まれています」と、市と県で権限の取り合いや規制に関する対立があると述べた。
加熱式たばこの規制強化と課題―エビデンス不足に揺れる現状
藤井氏は受動喫煙防止条例に関する話題で「紙巻たばこに関しては結構厳しく今までも制限されてたんですけど、 加熱式は、一応対象なんだけど加熱式にはいくつかの種類があって判別がつかない、ということでこれまであんまり運用されていなかった。
ところが、最近はちょっとそこに対しても規制というか運用を変えてきていて、ちょうど今日のニュースで千代田区がポイ捨て苦情が増えたから加熱式も過料を課す、というものがありました。全体的な流れからすると、やはり加熱式もこういう対象に少しずつなっていく流れがあるのかなと思いながらも、一方で加熱式に関しては(有害性の)エビデンスがやはりまだはっきりしてないというところがあって、経過措置で東京都は対応しているというところですね」と、東京都における加熱式たばこの規制に触れた。
また、遊佐氏も「仮に健康被害があるとするならば、例えば電子たばこは健康被害が起きるというエビデンスがどこまであるのかという議論を ちゃんと突き詰めていくことが大事なんじゃないのかな」と電子たばこについて発言をしていた。
蔵氏は加熱式たばこについて「ニコチンだけを、事実上取り出したVAPEと呼ばれる商品が欧米では割と多く流通するようになってきてるんです。これに至っては、香りをつけたものなので、有害性が100分の1程度じゃないかというような学術論文があるくらいなんですよ」と紹介。
以上のように、加熱式たばこ・電子たばこであっても十分なエビデンスがないまま紙巻きたばこと同様に規制がかけられている点について議論が交わされた。また、遊佐氏が触れたように、横浜市はたばこ税での財源が年に232億円あるにもかかわらず、県が規制をすることで税収が減ってしまう、という問題も今後話し合わなければならないことだろう。