岐阜県岐南町が、前町長の指示によって職員が勤務開始前の5分間に出勤していたことを「時間外勤務」と認め、約1092万円の手当を支給すると発表した。これに対し、SNSでは「たった5分で?」という疑問の声もあれば、「地方の悪しき労働慣習」として問題視する意見もあった。
「5分くらいなら当然」と考える人もいるかもしれない。しかし、それが「指示されたもの」であり、「3年間続いていた」となれば話は別だ。これは単なる遅刻防止のための出勤推奨ではなく、正式な労働指示であり、労働時間として扱われるべきものだったのではないか。
SNS上では、さまざまな意見が飛び交っている。
「5分くらいで残業代?」という違和感
「運輸業では2時間前出勤もある」「5分どころか30分前出勤が当たり前の企業も多い」という意見が見られた。このような立場の人からすれば、「たった5分で残業代をもらえるのか」と納得しがたいのかもしれない。
しかし、これは「他の業界もやっているのだから仕方ない」という問題ではない。むしろ、この件を機に、「本来支払われるべき労働に対して対価が支払われているか」を考えるべきではないだろうか。実際に、日本では「サービス残業」が深刻な問題として度々取り上げられている。今回の件は、その一例として問題提起になりうる。
「地方の慣習が若者離れを加速させる」
「こうした慣習がある限り、地方で働く魅力は薄れる」という意見もあった。確かに、地方では古い労働慣行が根強く残っていることが多い。「暗黙の了解」で早出を求められたり、始業時間前の準備が当然視されたりする職場も少なくない。
こうした慣習が「働きやすさ」を損ない、若者や優秀な人材の流出につながっている可能性は否定できない。地方自治体が率先して労働環境の改善を図ることが、地域活性化にもつながるのではないだろうか。
「町長の責任は?」
「そもそも町長の指示が違法だったのでは?」という指摘もある。今回の件では、公平委員会が勧告するまで3年間も放置されていた。これは「指示が問題視されなかった」のか、それとも「声を上げにくい環境だった」のか。いずれにせよ、労働環境の適正化を図るべき立場の町長が、逆に不適切な指示を出していたことは問題だろう。
今回の岐南町の対応は、法的には正しい判断だった。しかし、同様の「無意識のサービス残業」は全国の企業や自治体でも行われている可能性が高い。
この件をきっかけに、「働いた分の対価を得るのは当然の権利」という意識を広めることが大切だろう。「自分の職場ではどうなのか?」と考えることが、より公正な労働環境を作る第一歩になるのではないだろうか。
文・野島カズヒコ