海洋が直面する環境問題に対処し、持続可能な未来を目指すため、富士通株式会社(以下「富士通」)の研究チームは、海中の生物や構造物を精密に再現する海洋デジタルツイン技術の開発に着手しました。この技術は、海洋の状態をデジタルで高精度に再現し、海洋生態系の保全やカーボンニュートラル、生物多様性保全に向けた施策立案を可能にします。
技術開発の背景
海洋は地球の表面積の約70%を占め、気候変動に大きな影響を及ぼします。この重要な海洋環境を守るため、富士通ではAI技術を活用し、自律型無人潜水機(AUV)を用いて、海中生物や構造物の高解像度3次元形状データを取得する技術を開発しました。
革新的な技術の紹介
本技術は、以下の二つの主要な技術から構成されます。
1画像鮮明化AI技術: 濁った海中でも対象物を明確に識別し、形状を正確に計測することを可能にします。このAI技術は、濁りを除去し、ぼけた輪郭を改善することで、被写体本来の色や形を鮮明に再現します。
2リアルタイム計測技術: 波や潮流の中でも自律型無人潜水機からの安定計測を実現します。これにより、動的な海洋環境下でも精度の高いデータ取得が可能になります。
沖縄県石垣島近海で行われた実証実験では、サンゴ礁の精密な3次元形状データの取得に成功しました。これは、富士通が開発した技術の有効性を示す重要な成果です。
今後の展望
2026年度中には、この技術を藻場の研究にも応用し、ブルーカーボンの吸収量が多い海藻などの海洋デジタルツインの確立を目指します。これにより、藻場が吸蔵する炭素の見積りや藻場の保全・造成をする施策、サンゴ礁における生物多様性を保全する施策などの立案を支援し、サステナビリティ・トランスフォーメーション(SX)を推進します。
この海洋デジタルツイン技術の開発は、地球温暖化と生物多様性の損失という時代の課題に直面する中、海洋環境の保全と持続可能な未来への重要な一歩です。富士通は、この技術が持つ可能性を最大限に活用し、地球の未来に貢献していく所存です。
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