取引先の担当者から社長へ。コロナ禍でも就任から2年で個人売上アベレージ10%アップ実現

東海ビジネスサービス株式会社では、2020年8月の事業継承にて元取引先の担当者を代表取締役社長に任命するという異例の人事を行った。社員に直接メッセージを伝えられないコロナ禍の就任にも関わらず、組織体制、社員の目標設定などを大きく変え、わずか2年で個人売上アベレージ10% アップを実現したという。

<事業承継までの経緯>
田中亮宇現代表は、2010年頃より前職の一担当(3か月程度のスポット案件)として、東海ビジネスサービス株式会社の仕事を受託。当時の代表(名誉会長)より、経営相談を不定期に受けていたとのこと。報酬を得ていたのではなく、飲食をご馳走いただきながら相談を受けるような関係性だったという。
会長へのアドバイスからか、2018年頃より事業継承の打診を受けるが、当時はM&A部長として部を引っ張っていたため、事業会社に転身するという気は進まず一度保留。しかしその後、企業の外部から第三者として意見に対し責任を負わないコンサルタントとしてのやりがいに疑問を感じ、経営をやりたいと思い快諾したという。2019年5月から本格的に事業へ参画し、2020年8月に代表取締役に就任することとなった。

<主な事業内容について>
【SES事業】
IT技術者の派遣事業。
会社設立当初より行っている事業で、大手SIerを中心に当社のITエンジニアがクライアント先に出向き、客先にて技術力を提供している。
インフラ関係の案件をはじめ、開発案件や業務支援、学校の支援業務など幅広く行っている。
【ITコンサルティング事業】
現代表が立ち上げた新事業。
主に中小企業をターゲットとし、M&AをITの側面で支援する「ITデューデリジェンス業務」と、中小企業のDX化の支援を行う「業務効率化支援業務」を中心に行っている。

これまで大手企業クライアントのSES事業にて身に付けてきたノウハウや、ITエンジニアたちのスキルをITリテラシー等の知識不足により課題を感じている中小企業に還元することにより、中小企業の事業継続の支援をすることを目的として事業部を立ち上げた。
田中代表「中小企業の事業継続がなければ日本の発展はありません。個人事業主も含めると400万社以上あると言われている中小企業に目を向け、DX化のサポートを行うことにより、日本全体のIT化を促進し社会貢献を行うとともに、当社の社員の市場価値を高めていく環境にしていきたいと考えています。」

<承継後改新・改革して成功したこと、失敗したこと>
■成功したこと:人財の投資を実行
①引っ越し
本社のメンバーの環境改善のため、コストアップ覚悟で和式トイレであった古い本社から引っ越しを断行。
自分たちが環境に満足がなければ、外にホスピタリティを与えることはできず、また採用に関しても前のオフィスでは入社したいという欲求は薄れるため不利に働くと考えた。
その他、来社率が300%アップするなど取引先面談にも貢献。本社の社員も明るくなった。
②人事部設立
今まで、人事部がなく、総務部門が片手間で採用をやっていたことから秋以降での採用が多く、それまで内定がもらえなかった学生への採用活動となっていた。
⇒人事部部門を作り春からの採用をスタートさせ、他社と同じタイミングで学生に情報を伝えることができ、より欲しい人材を採用でき、若手社員のレベルを向上させることができた。
③給与水準アップ
給与水準を一人あたり年収30万程度の引き上げと、職務主義による給与体系に変更。
⇒利益の80百万円がなくなった。こちらは、人材の流出を防ぐために実行。

■失敗したこと:
・代表就任時コロナ禍ということもあり、社員に会うことができなかった。改革には社長が直接社員全員に会い、自分の想いやビジョンなどを伝えなけれはいけないという思いが強くあるため、現在は社員一人ひとりとの面談を実施し、直接思いを伝えているとのこと。
・慣習を変えるには1人ではなく、同じ考え、思いを発信できる腹心のメンバーが必要ながら外部から連れてこなかった為、改革が鈍化していると感じているとのこと。

現在では上記失敗点を踏まえ、未来図ブックという冊子を作成し、社員へ考え方を伝えているのだという。また、次世代を担ってほしいメンバーを指名し、まずは少人数に対して共感を得てもらうような動きをしている。次世代のメンバーと密にやり取りし、次世代メンバーを軸に浸透させて行きたいという考えだ。

<成功して得た実績>
目標単価という一人当たりの月額予算を設定したことで、SESの一人ひとりに単価概念を持たせ、社員売上が10%程度アップしたという。

これまでは評価が年功序列であったことが要因か、個人の予算設定がなかった。SESの場合、通常はスキルに応じて請求金額が変わるが、その判断および指針がなかったのだ。そこで人事評価制度を作成し、それぞれのランクを決定、ランクに応じて交渉するための単価を設定、最低単価を下回らないよう価格交渉をしてもらうようにしたとのこと。単価は営業職には伝えて、ベースの報酬以上でないと仕事を取ってきてはいけないという流れにしているのだそうだ。

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